授業に対する質問・コメントQeustion and Comments

第11回授業11th

C. 宇宙空間において、従来の電源ユニットに比べて安定した電力供給を可能とするNPSに関する国際法整備がまだ十分とは言えない現状を理解した。その懸念事項としてはやはり危険性・安全性に起因するものであるが、言い換えるとNPSの性能に関するものと考えることができる。その点では速やかな核融合発電の実装が望まれるところである。
 月面上での使用における議論は、天体の日照・被爆量などの月面環境においてどこまで原子力の危険性を許容できるのかというバランスが重要であると感じた。将来的な人類の居住地点とするのか、あくまでも他の天体への前線基地としての月利用と割り切るのか、月を将来的にどのように扱っていくのかが定まることによっても方向性が左右されるのかもしれない。

A. コメントありがとうございます!確かに・・長期にわたり、月で何をしたいのか・・によって、ルール作りも変わってきますね。単なる火星探査への中継点と捉えて雑にヘリウム3を使い果たされても・・いざ住む段階になった際に困ります!とくに廃棄場については予め検討が必要そうですね。自分の住んでいる地区でもゴミ出しルールの違反が一番の問題ですし(笑)。

C. 今回の授業で扱ったNPSに限らず、宇宙に関する国際規則は何か問題が起きてから規制する近視眼的なものでもう少し未来を見据えた条文にできなかったのかと思います。未来予測の困難性以外にも、条約をコンセンサスで採択しようとする場合、現在問題になっていないような論点を盛り込むことで争点を増やしてしまうより今課題となっているものを確実に規制したいという心理が働き、うすうす将来問題になりそうと思っていても無視してしまうのではないでしょうか。将来の問題の予想が法律家や科学者に難しいのであればSF作家でもUNCOPOUSに連れてきたらいいのではと思います。

A. コメントありがとうございます。その通りかと思います!宇宙デブリの問題(次回の講義)でも、10年以上も前からシミュレーションが作成されているのに宇宙活動国がそこまで実際に危機感を持たなかったように・・。廃棄されたNPSで宇宙飛行士が月面で被曝するリスクを真摯に感じて欲しいのですが・・。ただ、宇宙活動国の中でも、打上げ能力(宇宙物体を打上げて運用できる技術)を有する国はまだ13‐15ヵ国ぐらいです・・。国連加盟国が196ヵ国ですので、NPS問題にはなかなか実感を持って臨みにくいのかもしれませんね。

C. 宇宙商業利用のエネルギー源としてNPSが有力な一方で、核不拡散体制の変質に留意したいと感じました。原子力平和利用は各国の奪い得ない権利である以上、技術的制約で急激な拡散が困難な内にIAEAが宇宙における保障措置のルールを精緻化すべきで、元々強制力に課題がある特別査察等の警報的価値が更に弱まれば、従来の規範自体にまで悪影響が及ぶ可能性を懸念しました。宇宙空間のグローバルなアクセス性含め、地上と同じ感覚で良いのか疑問が残る上、核兵器の価値が高まってしまった現代の状況も考慮すべきと感じました。

A. 考えさせられますね・・。「NPSを使える国=先進国」のようなイメージはすでに出来上がっているかと思います。月面でNPSを使用したことのある国が、米(アポロ時代)のほか、中国、ロシア(着陸に失敗)、そして近々インドも使用するそうです。この勢いで地上で核の拡散が進まないように・・せめて核物質の管理の難しさや被曝被害の実態についても認識が広がるとよいですね。ただ、議論するのも憚れるという日本の風潮では国際ルールの国際議論についていけなくなりますので・・ひとまずIAEAの今後の動きを注目していきましょう!

C. 今回の授業でNPS原則の適用範囲に穴があるということ、その穴も解っていて敢えて触れていないというあたりは解りましたが、個人的には
@ 「人類が居住する」という点では地球以外の天体であれ宇宙ステーションであれ変わりがないのだからNPS原則ではなく地球上と同じ基準を適用する
A @とは逆に地球と同じく生命維持装置なしでも居住ができる空間は当面存在しようがないのだから、天体上でもNPS原則を適用する
のどちらかで良いのでは?と思います。

A. コメントありがとうございます。条約の解釈にもルールがあるので、なかなか天体も!と言えないのが学術的な課題です・・。1992年NPS原則を条約に持っていくか、追加議定書のような新たな規則を追記して「天体にも適用される」という文言をいれれば本問題は解決です!なお、月面まで持っていく間に、地上に落ちるリスクや人工衛星と衝突するリスク、月面着陸の失敗リスクなど・・地上でのNPS利用よりも、検討すべき場面がいくつもあるのだと思います。

C. NPSの処分に対する質問が気になったので、調べてみたところ以下の回答が見つかりました:
◎ 宇宙核電源の廃棄方法は、宇宙船などに使用される放射性発電装置(例:放射性同位体熱電発電装置、RTG)などを安全かつ環境保護を確保するために非常に重要かつ注意深く管理されるプロセスです。以下は、宇宙核電源の廃棄方法に関する重要なポイントです:
・ プルトニウム-238の封じ込め:ほとんどの宇宙核電源は燃料としてプルトニウム-238を使用しています。これらの電源を廃棄する際の主な目標は、この放射性物質の環境への放出を防ぐことです。
・ 再突入と焼却:軌道上にある宇宙船やその核電源で動作する宇宙船は、特定の角度と軌道で地球の大気圏に再突入するように誘導されることで、再突入時に焼却されることがあります。これは宇宙船やその核電源を廃棄するためによく使用される方法です。
・ 深宇宙ミッション:地球に戻らない深宇宙ミッションの宇宙船用の廃棄方法は、宇宙船を他の天体の軌道に送ったり、地球や他の宇宙船に危険をもたらさないように深宇宙に送るなどの手段が含まれる場合があります。
・ 長期封じ込め:長期間軌道上に留まると予想される宇宙船の場合、誤って放射線が放出されるのを防ぐために核電源が封じ込められ、遮蔽されるような措置が講じられます。
・ 国際規制:宇宙核電源の廃棄は、これらの放射性物質に関連する潜在的なリスクを最小化するために、安全性、環境保護、規制の遵守を優先するように慎重に計画され、実行されます。NASAなどの組織は、これらの規制を遵守するために国際的なパートナーと緊密に連携しています。

A. いろいろと調べてくださりありがとうございます!勉強になります!国際規制のところですが、NASAはいいのですが・・ルールをきちんと守らない国が出てきた場合の、是正措置をどうするか、また、月面で放射能漏れが起こっていることを探知するにはどうすればよいのか・・という点も今後検討が必要そうですね。

C. 太陽光発電について、自分は、HAPSの関係で、たまに情報を漁るときがありますが、太陽光発電については、フィルム型「ペロブスカイト太陽電池」というものがあり、これが航空・宇宙関連で使用されるのではないかと考えられます。 https://enetech.co.jp/guide/perovskite-solar-cells/#i-2
勿論、まだまだ課題も多いようなのですが、建物全体に貼ることができるなど、従来よりも場所を取らないのが利点となります。 (尚、関連して、フランスの会社が新たに“エコな”飛行船での世界一周を計画しているようです  https://www.esquire.com/jp/news/a45677830/airship-making-nonstop-fully-electric-around-the-world-flight/ )

A. 新しい情報を共有くださりありがとうございます。航空宇宙技術はどんどん進んでいくので、面白いですね!太陽電池がそこまで開発が進んでいるとは知りませんでした。NPSありきではなく、持続可能な月の利用を想定して、ぜひ自然に優しい技術開発を進めていってほしいです。

第12回授業12th

C. 宇宙デブリの低減アプローチは「除去する」と「増やさない」という二つの方向性から取り組まれているが、前者の技術的アプローチが進展しなければ問題の解決には至らない。デブリと衝突する確率が具体的に何%になるまで除去すればよいのかという、「何をもって安全か」という答えがまとまり難い問題の一つだと感じた。

A. コメントありがとうございます。今ある宇宙デブリを除去する技術と、これから打上げる宇宙物体のデブリ化を防ぐ低減策の、両方からアプローチしないといけない問題ですよね。最終ゴールをどこにするのか・・。環境問題と同じで、ほとんどの宇宙デブリを宇宙活動国という先進国が排出してきたため、これから宇宙活動に参入する発展途上国や、まだ宇宙活動をまったく行っていない国を含めてのルール作り(条約など)でコンセンサスに至るのは難しそうですね。

Q. 宇宙デブリが宇宙諸条約上の「宇宙物体」に含まれないというのが通説との話がありました。確かに賠償責任が際限なく広がると、賠償リスクの大きさから宇宙活動が委縮してしまうとも思います。他方で、ASAT実験などで発生した宇宙デブリに関しても賠償責任が無いとなると被害国にあまりにも不公平です。宇宙デブリに関しては重過失責任にするなど宇宙諸条約上の規定の修正や解釈の変更をすることが望ましいと思いますが、そのような主張や議論はないのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます。現時点では、ASAT実験は国の軍事演習という位置づけですので・・国連決議でASAT実験を行わないという規範形成の途中です。確かに「ASAT実験で発生した宇宙デブリで生じた損害は、過失が認められるため、損害責任を負う!」という規範、欲しいですね!ASAT実験、ASAT兵器の使用、ともに大量の宇宙デブリが発生します。「宇宙デブリを発生させるような宇宙空間における武力行使は違法である」など、ICJが勧告出してくれないかしら・・!

C. 宇宙状況把握(SSA)に加え、宇宙機運用の意図や能力も把握する宇宙領域把握(Space Domain Awareness)として、戦略3文書では「宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。」とされ、2026年にSDA衛星打上も予定されているようです。海におけるシーレーン防護などからの類推で、宇宙交通管理(STM)についてもチョークポイント的な空間(地表重要拠点、軌道までの交通線の一部など)を確保する競争が始まるように感じました(点を押さえれば、全体の交通線やエリア面に干渉できるため)。

A. いろいろとお教えくださりありがとうございます!「宇宙からの国家安全保障」というアプローチですね。次回の講義ではITUが進めてきたサイバーセキュリティのお話になります。これまでSSAは宇宙の軍事利用、STMは民生・商業利用という意味合いが強かったのですが、だんだんと宇宙空間の利用は持続可能な利用を!ということで、あまり軍事・民生・商業利用に分けなくなってきました。また講義中に議論して参りましょう!

C. 宇宙デブリの定義が賠償責任の観点から難しいという話を聞いて思ったのですが、賠償責任の範囲(大気圏内は絶対責任)については現行から変えた方が良いんじゃないかと思います。一度事故が起これば多大な損害を招き得るからというのは理解できますが、さすがに打ち上げ国に対する責任が重すぎるような。ロケットの打ち上げが難しかった時代の基準は、ある程度軽易に打ち上げられるようになった現代では宇宙開発の阻害事項になっている気がします。

A. 確かにそうですね!打上げが難しかった50‐70年代と今では違いますし、ニュースペースという国家レベルの宇宙技術を持った民間企業も出てきていますから!また、条文をよく読むと「地表における損害」と「飛行中の航空機」としか書いていませんので・・。飛行中の宇宙物体の場合・・過失がなければ損害責任を負わない可能性も出てきます・・。また、地表じゃない損害として・・ぶつかったけど、なんとかそのまま宇宙空間に進んだものの・・計画されていた軌道には投入できなかった・・という場合・・これも過失がなければ賠償責任なし・・となるんでしょうか?宇宙損害責任条約における賠償責任制度は、いろいろと課題が多いのです。

Q. 宇宙状況認識技術の将来について、最も期待される発展や革新は何だと考えられますか?

A. ご質問ありがとうございます!SSA技術では、これから衝突するであろう宇宙物体のルートと、衝突後にどうなるかというシミュレーションもできるらしいです!つまり「予測が可能」となってくるわけです。この技術が進んでいけば、宇宙条約第9条にある「有害な干渉が起こると信じる国」が、これから有害な干渉を起こすであろう国に対して「事前の国際協議」を求めることができます。また、「このままだと衝突するよ」と警告された国が何も措置を取らなかった場合、過失が認められたり、妥当な考慮を払っていないといった点が立証できます。国家の負う義務がきちんと遵守されているか、憲章することが可能となってきます!

C. 自分の興味ある分野の話で申し訳ないのですが、HAPSを開発する意義というのは、(それが飛行船タイプであれ、飛行機タイプであれ)今回問題になっているような、デブリ問題、特に、緊密な通信、情報収集のために期待しされている衛星コンスレテーションによって生じる、低軌道上の混雑を解消するという意味で、決して不要な事ではないのだろう、と感じました。(悲しいことに、そこに、日本がお金を投じる余裕があるかどうかは、また別かもしれませんが・・・)また、デブリ回収技術の開発と実施が、戦時の衛星破壊と連動する、軍事行動として捉えられかねない、というのも、全く意識していなかったので、興味深い視点でした。逆に言えば、将来的にはそれらを応用した軍事行動をとることも視野に入れて、防衛法制方向での検討もしなければならないのかもしれないと感じます。なお、発言の際に言及した漫画・アニメ『プラネテス』の概要です。 https://www.nhk.jp/p/planetes/ts/9QQZ2Q783Z/         高校生の自分が宇宙デブリ問題を知るきっかけのアニメ作品でして、内容的には、現在でも十分見ごたえがあるかと思います。もし、未見でしたら是非ご覧ください。

A. いろいろとご共有くださりありがとうございます!そうなんですよね、高高度空域の活用はこれからどんどん進んでいくかと思います。宇宙デブリ・・その危険性は・・一度目の当たりにしないと、なかなか想像ができないのがネックです・・。一つの宇宙物体を破壊した後に、自国の衛星も宇宙デブリで破壊される・・という状況を把握したうえで、「持続可能な宇宙戦略」があるといいですね!

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