授業に対する質問・コメントQeustion and Comments
第13回授業13th
C. 航空無線業務での意図しない電波干渉、訓練・任務での機上電子妨害電波の照射など、通信を阻害することについては経験してきたが、衛星に関する通信の規範や制度についてはあまり意識してこなかった。無線通信の世界では、呼び出しが不明瞭で自己が呼ばれているか判然としない場合は応答しなければならないなど、目に見えない領域での善意が多く活躍している。善意や努力といったものは罰則を伴う制度に落とし込むには信頼性に欠けるが、規範レベルであれば理解ができる。電波をさえぎる物がほぼない宇宙空間においては、ルールに則ったプレイヤーによる注意深い電波の使用が干渉を防ぐことに直結することになるのだと理解した。
A. コメントありがとうございます!実際に有害な干渉をご経験されているとは!通信活動は国家主権の一部として捉えられるほど、国にとっては根幹的な活動であり、通信インフラへの妨害や他国からの衛星放送によっては主権侵害に該当するなど、いろいろな法的問題を含みます。技術的ミス・人為的ミスと、攻撃性のある通信妨害などは、毎回慎重な調査が必要になりそうですが、有害な干渉の程度によっては即国家安全保障への脅威となりますので・・これからもITUによる国際規制に注目して参りましょう!
C. 地上での違法な干渉などについては電波の発信源の方角からどの国のものか割り出しは比較的容易かと思いますが、宇宙ではかなり難しそうだと思います。電波の発信源の衛星がわかってもそれがどの国のものか割り出すにはSSAやSDAといった取り組みが不可欠だと思うので、こういった点でもITUと宇宙の安全保障の連携が必要とされるのかと思いました。余談ですが総務省の電波監視施設(三浦電波監視センター)は防大近辺に所在するようです。
A. コメントありがとうございます。確かに衛星から違法な信号を出されたら・・あ、その衛星自体も干渉されるのでしょうかね・・ここら辺は総務省やJAXAなど専門家にレクチャーを受けたいところです。機会があったら聞いてみます!
C. 総務省の電波監視としてDEURAS(デューラス)と呼ばれる、全国設置センサや車載センサで受信した電波をモニタ−して方位等を測定し、不法無線局の位置等を特定するシステムがあり、能力が高い印象があります。宇宙電波監視業務についても、三浦電波監視センターがITUに報告しているそうです。
A. 三浦電波監視センターに一度行ってみたいですね。
C. 宇宙の軍事利用に適用可能な国際法マニュアル(MILAMOSミラモス)や、軍事宇宙活動に関する国際法についてのウーメラマニュアル(WOOMERA)等の学術的アプローチも改めて知れました。武力紛争法と宇宙法どちらをベースにするかという視点や、「宇宙活動となるサイバー活動」は宇宙法で規制する考え方もある事を知れて良かったです。
A. コメントありがとうございます。そうなんです、サイバー安全保障と宇宙安全保障とがいよいよ交錯して参りました。衛星がIoT化するなんて・・それだけサイバー脅威への脆弱性が増すわけですが、国連ではいまだ両者を別々の決議として扱っています。
C. どこからどこまでがサイバー犯罪でどこからがサイバー攻撃なのかについては本当に難しいと感じます。スキルのある個人が文字通り国や世界を相手に出来るという特性があるうえ、個人の特定を難しくする技術も割とあるのでそれが本当に個人や犯罪組織のハッカーなのか国家のサイバー戦組織なのか解りづらい。
A. 仰る通りです。同じサイバー犯罪でも、サイバー攻撃やサイバーテロを引き起こすためのサイバー犯罪なのか、金銭目的のサイバー犯罪なのか・・・捜査しないと分からないですよね。ITUによるGlobal Cybersecurity Indexでは、サイバー犯罪に対する各国の法的対応が確認できます。
C. 宇宙システムのデジタル化とサイバーセキュリティの脆弱性が増していることで宇宙資産やデータを保護するために、宇宙を活用する国々や業界関係者が堅牢なサイバーセキュリティ対策を向上することが重要だということが分かりました。宇宙法やITU規則など、宇宙におけるサイバー脅威に対処するために定期的に進化する必要があります。サイバースペースでの責任ある行動の明確なガイドラインや悪意のある活動の結果についての規定は、宇宙活動の安全性と持続可能性を維持するために不可欠です。また、無線周波数と衛星軌道の調整が重要であり、無線周波数と衛星軌道の効率的な調整は、有害干渉を防止し、衛星通信ネットワークの円滑な運用を確保するために不可欠です。国家政府と国際機関は、ITU規則の遵守を強化し、無線周波数の割り当てや干渉問題に関連する紛争を解決するために協力する必要があると思います。
A. コメントをありがとうございます!国内でも関連する機関間の調整も大事になってきますね。日本では通信は総務省、宇宙活動は文科省です。また、サイバー犯罪は警察庁、サイバー攻撃(国際法では武力攻撃と同等の損害規模)は防衛省の管轄となりますね。また、サイバー犯罪が起こった場合、その「証拠」を他の国と共有することも困難です。国際刑事警察機構(Interpol)ではサイバー犯罪に関する国際協力を進めています。
Q. 本日も興味深い講義、ありがとうございました。電波の管理については、無人機の分野での周波数確保について苦い思いを抱いた経験があるので、その大本がどうなっているのか、大変興味深く学ぶことができました。第48条の干渉関連で、軍用無線の除外規定がありましたが、これは、あくまで実行動中に限るという事でよいのでしょうか?(訓練に関しては、総務省の割り当てで実施しているもので、少し気になりました。)
A. ご質問ありがとうございます!ITU憲章第48条の適用対象は「軍事用局の設置」です。一方、ITU法制度は戦時におけるサイバー作戦には適用されない点はぜひ押さえておきましょう!
第14回授業14th
C. GPSのコストと収益について気になり調べたところ運用コストは毎日約200万ドルもかかり、アメリカの納税者負担となっているそうです。一方でGPSを利用したシステム関連の市場規模は2022年で942億ドルもあり、米国企業のシェアがどれくらいかは分かりませんが雇用の創出や産業育成の効果はそれなりにありそうです。
A. 調べてくださりありがとうございます!やはりGNSSは維持費がすごいんですね。今や全世界の交通機関や金融機関がGNSSなしでは機能しないと考えると、どこか国際機関で加盟国から予算を集めて・・とも思いますが、「戦略的技術=他国とは共有しない技術」らしいので、一か国で維持していくのでしょうね。
C. GNSS関連は日本のみちびきも4→7→11基体制と拡充見込みがある中、限定地域ではGPSに依存しない事も視野に入れ始めたようです。米国など、世界が自国優先で内向きとなるリスクを考えると妥当な気もしつつ、相互協力でギブアンドテイクの関係もあり得ると感じました。また、データ共有は国際レジーム的課題だけでなく各国間の取り決めが必要で、例えば2023年読売記事で紹介されたBMDレーダーの日米韓データ共有には情報共有の取り決めが重要だったので、宇宙分野におけるセキュリティクリアランス的な視点も先行的に持つ必要を感じました。
A. コメントをありがとうございます!空港での管制などは地上のシステムだけで足りるみたいですが、そういった自国だけで対応できる地域を拡大する点は確かに重要ですね。
C. 信頼醸成措置でロシアが「宇宙活動における透明性・信頼醸成措置」を提案したという話を聞いてると、字面は良いけどいつものロシア仕草だなあという感じがします。ロシアや中国は、自分がまだ準備が整っていない状況では先行者の足を引っ張るために「みんなルールを守ろうよ!」と言うけど、自分が力をつけてきたら率先してルールを破って開き直ることを繰り返してるんで、この提案も同じことを繰り返すんだろうなあとは思います。
A. 率直なコメントをありがとうございます(笑)。いろいろ感じますよね。外交交渉にも専門家ならではのルールやパターンがあるようですので・・。講義中に私も感想を述べてしまいましたが、論文を書く際はとにかく主観を取り除いて・・批判せず・・粛々と書くように努めています(笑)。
C. あらゆる定義が定まっていない宇宙に関する領域では条約として物事を固定化できないため、TCBMsは有効であると感じた。しかし、信頼醸成はあくまで多国間の信頼を醸成するにすぎず、TCBMsでは最終的な安心や信用が提供されないので難しい問題である。さらに、TCBMsの各国の考え方が異なっているならば猶更だ。不明確な定義を改め、各国の認識をすり合わせることでより拘束力のあるものへと進化させていくことが、現在の国際社会では重要だと考える。
A. 確かにロシアによるウクライナ侵攻以降、これまで考えられてきた「透明性の向上=脅威低減・抑止」といった図式が成り立たなくなってきたという印象はありますね。ですが宇宙デブリが発生した原因や各国の過失が明らかになることは、やはり国際法の適用において重要ですね。法的拘束力のないルールであっても、宇宙空間における無責任な行為が明確となる状況であれば、次第にルールを遵守しようという国際環境が整っていくのでは・・と願っています。
C. 「アメリカがNASAの商業乗員プログラムの一環としてSpaceXのCrew Dragon宇宙船を利用してISSに宇宙飛行士を送り続けていることは、宇宙飛行士をISSに輸送するためのロシアのソユーズロケットへの依存からの転換を象徴しています。このプログラムにより、ロシアに支払っていた膨大な費用が削減され、民間企業であるSpaceXとNASAの協力によって、宇宙ロケットを送ることが可能となりました。SpaceXのロケットの再利用性は、安全にロケットを地球に戻し、燃料を補給して再利用することで、1機あたりのコストを大幅に低減し、火星に着陸してそこに居住可能な環境を作るなど、野心的なミッションを可能にしました。しかし、宇宙探査の頻度が増加し、民間セクターが参入することで、国際宇宙法は新たな課題に直面する可能性があります。
A. コメントをありがとうございます!SpaceXによる宇宙活動はもはや国レベルですが、そういった目的があるのですね。ロシアによるウクライナの衛星通信遮断の際、SpaceX社がStarlinkのサービスを提供したのですが、その後、同社の社員により「本社のサービスを戦争に使ってはならない」という声があがりました。民間企業の力で宇宙空間の平和利用を守る時代がきたのでは・・と感激しました。
Q. 一つ気になったのは、「検証が可能かどうか」という言葉であります。来週の講義でも取り扱う内容かもしれないのですが、これについては、H-2の打ち上げに関係者を招待した例など、第三者が履行を確認できる状況、という意味でよろしいでしょうか?逆に言えば、これは今後技術が発展すれば、実現可能になるのだろうか、とも思いました。
A. ご質問ありがとうございます。国際法において、検証制度が発展したのは軍縮・軍備管理法の分野になります。大量破壊兵器やその運搬手段(ICBMやロケット)に関する条約の違反は、壊滅的な結果をもたらすため、違反を予防するために設けられたものです。ですので、検証制度にはいくつかの方法があり、その一つが査察ということになります。宇宙状況監視(SSA)技術は宇宙物体および宇宙デブリをカタログ化し、可視化できておりますので、これらを検証手段として使えたらいいですね。