授業に対する質問・コメントQeustion and Comments
第3回授業3rd
本日の授業ありがとうございました。シカゴ・バミューダ体制について英語版ネットで探したのですが、出てきませんでした。もし、先生の方で英参考文献ございましたら、もらうことができますでしょうか。よろしくお願いいたします。
A. リクエストありがとうございます!Bermuda Agreementというキーワードで、Google Scholarで調べてみてください! 1970年代の論文もたくさん出てきます。
C. 授業でウクライナが飛行禁止区域の設定を求めているとの話がありました。 過去にはイラクのフセイン政権軍の空爆によるクルド人虐殺を防ぐため、リビア内戦時に政権軍による反体制派への空爆を阻止するために設定された事例があったと記憶しています。 これら事例では、米軍やNATO軍などが履行確保のため違反機の撃墜などの強制措置を行うことから安保理の授権の上で飛行禁止区域が設定されていました。 ウクライナでロシア相手に飛行禁止区域を設定することは安保理の授権も得られず、またNATO軍とロシア軍の直接的な交戦となるため実現しなかったと記憶しています。 シカゴ条約上でもロシアの軍事活動を規制できないというのは、国際法の限界を示す一つの例だと感じました。
A. この点、私にとっても新しい知見となります。ご共有くださりありがとうございます。今後、商業宇宙港の運用国が増えるにつれ、民間航空機のみならず民間宇宙機も対象となりかねないですね。
Q. 航空機の登録(国籍)について、宇宙機(?)は周回に乗ることができたのを確認してから登録が行われるとありましたが、周回に乗ることができずに地球へ落ちて地上に被害が出た際の責任はだれが持つことになるのでしょうか。複数国による共同の打ち上げ時など、ロケットと宇宙機の所有者が異なる場合について疑問に感じます。
A. ご質問ありがとうございます。国際宇宙法の講義(第5回以降)が今から楽しみですね!1972年宇宙損害責任条約が定める「打上げ国」が賠償責任を追うこととなります。@打上げた国、A打上げをさせる(発注した)国、B自国の領土もしくはC自国の施設から打上げた国、これらの国すべてが賠償責任を追うこととなります。
C. シカゴ条約第3条の2によって、民間航空機を使ったテロ攻撃を対領空侵犯措置で阻止するのは非常に難しいです。無線が通じない場合、航空機の故障か、テロリストによる故意かの判別が上空の目視確認だけでは判別できないことが多いためです。強制着陸へ誘導したとしても、着陸直前に空港に危害を与えようとする素振りを見せても現行では突っ込まれるまで手を出せないのが難しいところだと感じます。
A. 現場目線ですと・・阻止というのは本当に難しそうですね・・。次回ではハイジャックを含めた航空犯罪の講義です!歴史的な東京条約からゆっくり説明しますが・・実際の航空会社の対応策など、機会があれば訊いてみたいものです。
Q. シカゴ条約第3条の2について、民間機に対する武器の使用は原則禁止されている点について質問です。 「ハイジャックされた機体の撃墜」について、アメリカは自衛権の範疇にあると主張しているほか、ドイツは撃墜可能とする法を整備したもののドイツ基本法の定める「生命の尊厳」を冒すものとして憲法裁に違憲認定、日本は洞爺湖サミット時に問題になったものの敢えて対処は明言せず、という状況だと認識していますが、実際にハイジャック機を撃墜したとして、自衛権の行使だと主張しない(できない)限り、シカゴ条約上は違法行為となるのでしょうか。 ハイジャック機の撃墜を自衛権行使というのはかなり無理があるように思えますが、かといって端から墜落するつもりで飛んでいるハイジャック機を撃墜することなく無力化しないと国際法違反というのはかなり無茶というか無理があるという感があるのですが…。
A. ご質問ありがとうございます。ハイジャックに特化した条約を第4回講義で説明する予定です!通常、政治犯によるハイジャック=追撃とはなりません。講義で議論しましょう!
C. 飛行禁止区域(No Fly Zone)について少し調べてみると、安保理決議によるものは第三国に対しても法的拘束力を有するようでした(決議内容の範囲で)。
・1991〜2003 イラク 設定:米国(安保理決議688)
・1993〜1995 ボスニア・ヘルツェゴビナ 設定:NATO(安保理決議781、816)
・2011 リビア 設定:NATO(安保理決議1973)
その他はシカゴ条約9条による禁止区域や、附属書にも記載がある「Conflict Zone」(法的義務はなく、関係者に対する通知からエリアへの接近を思いとどまらせるもの)もあるようです。
A. いろいろと調べて下さりありがとうございます!実際、飛行禁止区域を設定することで、その他の民間航空機が安全なルートを選択できますね。決して「空の自由」を阻害するためではありませんね。私も調べてみようかと思います!
Q. 大韓航空機撃墜事件に、米ソ対立や日本の情報関係者に関する事以外に、民間航空と防空と言った観点での影響があったというのは初めて知りました。 一つ気になった事として、シカゴ条約第7条「カボタージュ」について、国内航空については外国人が航空輸送を禁ずる条文がありますけれども、これはやはり、内航船に外国人船員を採用しないと言った、他業種での取り決めの影響を受けているのでしょうか?
A. ご質問ありがとうございます。実際の起草過程を確認しないと分かりませんが、カボタージュが制定された背景には「自国領土内における航空ビジネスは自国の民間企業を優先する」という国内市場の保護という目的があります。
第4回授業4th
C. PPTによる資料作成についてはなかなか学ぶ機会がなかったため、講義の機会などに知ることができて非常に助かりました。作成時の参考にさせていただきたいとおもいます。
A. コメントありがとうございます!私もプレゼンテーションファイル(PPT)を使って学会報告をする際、はじめのうちはいろいろな色を使っていたのですが、アメリカの友人から「知的なスライドができれば、知的な印象を与えられる」と言われまして・・スマートなデザインや内容に則したデザインを選ぶようにしています。
Q. 東京条約第3条3項の「刑事裁判権を国の地方組織におく国を想定」というのは、アメリカの州法などを想定しているということでしょうか。
A. ご質問ありがとうございます。そうですね、この条項の解釈は実は2つあります。@国内法に従って刑事裁判権を行使しうることを規定したものであるため、刑事管轄権の競合を認めた条項と解釈する説と、A刑事裁判官を国の地方組織に置くく国のために、それが国内法によって行使される限り、その刑事管轄権を認める条項と解釈する説、です。私も米国の州法が例として考えられれると思います。
C. 宇宙に関する国際法を少しかじっていた私にとって、かなり詳細な規定を持つ(航空法の)条約が問題発生から比較的すぐに制定されたことが、遅々として法規制の進まない宇宙分野と対照的で意外でした。シカゴ条約の参加国の多さからも、航空分野は各国の利害が比較的一致しやすい領域なのかと思いました。
A. 私も同感です!やはり民間企業の航空業務における安全性確保という実利が伴うと、各国も規範形成に協力しやすいのかもしれません。
C. モントリオール条約(民空機に対する破壊防止条約)について調べてみるとテロ防止関連規定を盛り込んだ「北京条約」も出ていることを知ることができました(外務省HPを一見した限りでは日本はまだ締結したようには見えませんでしたが)。
A. そうでしたか!テロ関連の諸条約はなかなか「テロ」の定義が難しく・・。他にももっと条約があるかもしれませんね。ご共有くださりありがとうございます。
C. 番外編の論文構成のコツについて、こういう「論文の書き方」は独立した科目として教えてもらっておらずハウツー本で自分で学ぶしかなかったので、かなり勉強になりました。日本や英米式と比べて仏式の論文構成はかなり独特でしたが、何でもかんでも独自路線でやりたがるのはいかにもフランス人だなあと感じました。
A. 短い時間でしたが、少しでもお役に立てたなら嬉しいです!フランスは法哲学の本場ですので、論点を立証する方法にも歴史があり、また、その論文の形および言葉選びにも美しさを求めていきます。ですが、英米法分野の文献も、よく見ると、フランス式に当てはめることができます。
Q. 「ISSにおける刑事管轄権」関連で(質問が)1点あります。 ISSに関しては政府間協定で属人主義に基づき刑事裁判権が定められていますが、今後技術の進歩でその他の有人ステーションや宇宙往還機、月面コロニー等が実現していくと思われますが、宇宙空間における犯罪行為に対する包括的な取極めについて定めようという動きはないのでしょうか。調べた限りでは宇宙条約で漠然としたものはあるようなのですが、航空法や海洋法のように明確な基準はないと認識しています。
A. その通りです!ないです!(笑)。宇宙条約第5条で定めるように、宇宙飛行士とは人類の使節として守られるものであり、各国は厳しい審査(知性・身体的適正のほか、人格も含む)を以て宇宙飛行士を選抜します。ですので、宇宙飛行士が犯罪を起こすという想定はなされないまま法規範が形成されてきました。一方、これからは民間企業の社員が宇宙活動を行う時代がやってきます。どこかの国の月面上モジュール内で起こした犯罪でしたら登録国の国内法(刑法)が適用されますが、月上の砂漠のようなところでの活動が無法地帯とならないよう、犯罪に関するルール作りが考えられても良さそうですね。
Q. 航空事故に該当するかしないか、という事例で、よく話題になる、航空機からの部品落下については、航空法第76条にある、航空機損傷にあたるのでしょうか。それとも、その部品が何らかの被害(物件や死傷)をもたらさない限りは、事故には当たらないという認識でよろしいでしょうか。
A. ご質問ありがとうございます!航空機からの部品落下に基づく損害ですが、事故(Accident)なのか準事故(Incident)かという違いもありますが、基本的に損害を被った国もしくは者が、その損害に関する法規範を使って賠償を求めていきます。そういう意味では、航空機の製造過程に問題があれば、不良品として、航空機を買った顧客が訴えを起こす場合もあれば、当該航空機に乗っていた乗客が精神的なショックを受けたいうことで航空会社を訴える場合も想定できます。また、その落下部品が何も損害を生じなければ、航空事故には当たりません。ケーススタディがいろいろできる事例ですね。