授業に対する質問・コメントQeustion and Comments
第5回授業5th
Q. 1967年宇宙条約の第9条、国際協力原則に関して、宇宙に打ち上げをするすべての国が、宇宙でのミッション中に相互に常時監視を行っており、原則に違反していないかを確認しているということでしょうか?もしそうだとすれば、公式およびプライベート会社の宇宙物体を打ち上げる国々全てに対する監視はすべてNASAに委ねられているのでしょうか?
A. ご質問ありがとうございます!第9条は宇宙活動国に宇宙活動を監視するように義務付けてはいません。条約では、書いていないことまで禁止したり義務付けることはありません。ですが、確かに米国は宇宙監視システムを構築し、連合宇宙運用センター(CSpOC:Combined Space Operations Center)から宇宙物体(デブリを含む)の位置情報を公海しています。
Q. 宇宙条約第4条の平和利用原則について、「非軍事的」という意味で解釈する国の中にロシアが含まれていました。他方で、ロシアはキラー衛星の開発や宇宙空間への核兵器配備の可能性が報道されています。また、日米が中心となり核兵器の宇宙空間への配備を禁ずる安保理決議もロシアの拒否権行使により採択されていません。このようなことからロシアが第4条を「非軍事的」と解釈しているのか甚だ疑問です。ロシアは条文の解釈を変更したのでしょうか。それともロシア内では何らかの論理的整合性があるのでしょうか。
A. ご質問ありがとうございます。次回の講義冒頭でちょうどお話する点です。平和の解釈について、いまだ中国とロシアは「非軍事」の立場を取っています。これまで何度もジュネーブ軍縮会議(CD)で宇宙兵器配備禁止条約(PPWT)案を提出し、平和利用を謳うのですが(2005年にはロシアが透明性・信頼醸成措置決議を提出)、彼らの宇宙空間の軍事利用やASAT実験をみると、主張と行動とが矛盾しています。意図的に国際世論の注意を逸らそうとしていると批判する米国の見解にも一理ありますね。国連という外交の場でのパフォーマンスかもしれませんが、国際法における責任も追及できそうな・・。
C. GEOが競合空間で共有財的な側面を持つ事を知れました。最適ロケット打上点やヴァンアレン帯回避経路等の天体交通線も含め、クラブ財や公共財的な空間資源もある中、国家より上位の権威がないため自助に帰結するか、気候問題対応のように協調を目指すのか、宇宙でもやはりアナーキーについて考えさせられました。
A. 確かにそうですね。国際法における規範形成も大事なのですが、義務履行の確保があって初めて条約としての法的拘束力が発揮されるのかと思います。ウクライナ侵攻以降、これまで信じてきた善意に基づく履行システムでは心もとない時代となってきました。唯一、宇宙空間は他の分野と違う点は、兵器の配備や武力行使が「目に見える」という点です。可視化が抑止的な機能を有すると良いですね。
C. 宇宙条約第3条で国連憲章含む国際法の適用について記載がある事を知れました。宇宙での自衛権行使について以前回答頂いた際も想像しましたが、宇宙デブリをふまえた上での確信犯的な国家がいたケースなど、色々な事を考えさせられました。例:被侵略国が支援遅延など見捨てられリスクを嫌気し、同盟国等も巻き込むコスト強要として人工衛星の自衛を宣言
A. 面白い視点ですね(笑)。もともとASAT実験ができるというのは、相当な宇宙技術を有する国です。次回の講義でお話するASATですが、技術がない国でしたら、サイバー攻撃を介してのASATなどが懸念されるところです。
Q. 宇宙条約第7条関連について、大気圏内においては絶対責任を採用されているのに対し、宇宙空間では過失責任となっていますが、何故敢えて違う基準となっているのでしょうか?調べてはみたのですが、明確に理由を説明しているものは確認できませんでした。
A. ご質問ありがとうございます!ズバリ、答えは・・例えば地球低軌道(LEO)ではどの物体でも時速2万8800kmで地球を周回するという、活動するにはとても難しい空間だからです。このため、宇宙空間における損害については、過失の程度に応じて賠償責任が生ずる、という仕組みになりました。
C. 静止軌道の有限性についてはこれまでよく考えたことがなかったが、静止軌道という限られた空間には排除性と競合性があることが分かったので今後も各国のSLOT争いは尽きなさそうだと感じた。次回以降の講義で宇宙条約についてより知識を深めていきたいと思う。
A. コメントありがとうございます!空気や太陽光などは「無限」であるがゆえに、国際規制の対象となりません。一方、公共の場における「有限な資源」には国際規制がかかってきます。この講義では宇宙資源に関する回もありますので、一緒に学んでいきましょう!
Q. 今回、Peacefulの解釈や、大気圏とアウタースペースの違いなど、用語の解釈や翻訳の違いについての話が出てきましたが、国際条約ですと、翻訳も一苦労かと思います。特に気になったのは、大気圏とアウタースペースで、辞書を見る限りでは、特に違いはないように思われますが、本来の意味からすれば、明確に区別されるべきなのでしょうか(宇宙空間を中心とする考えと、地球を中心とする考え、と言った感じでしょうか)
A. ご質問ありがとうございます。これは・・同じ学術分野(例:国際法)でも、少しテーマが異なると訳が変わったり、もしくは既存の研究業績を尊重するあまり、昔の訳をそのまま導入するという慣行もあるため・・初心者には違和感を覚える訳もあります。ですので、機会があればぜひ原語も調べられると良いかと思います。例えば、空域(Air Space)と宇宙空間(Outer Space)のほか、深宇宙(Deep Space)という用語もありますが、深宇宙は国際宇宙法では(まだ)出てきていません。次回勉強する「絶対(賠償)責任」も、宇宙法ではAbsolute liabilityの表現ですが、環境法など他の分野ではStrict liabilityという用語が使われます。
第6回授業6th
C. 宇宙におけるデブリの増加率は年々に高まっていることから宇宙で直面する最大の問題の一つになるのは時間の問題だということに気づきました。
A. 本当ですね。夜空がゴミでいっぱい・・とは想像したくないですね(笑)。
C. ASATによる宇宙軍事化、または、宇宙における紛争的な面での激化がありえるのではないかと感じました。
A. ASATをすればするほど、宇宙空間の民生利用や商業利用も害されるという科学的事実に目を向けるべきなのですが・・ASAT実験でも上昇型(地上−宇宙)から軌道上(co-orbital)のものまで出ており・・はたまた静止軌道(GEO)でのランデブー近接オペレーション(RPO)まで実行されています。デブリ低減の文脈で、宇宙空間における軍事演習も国際法で禁止されると良いのですが。
C. 5月27日の北朝鮮の偵察衛星打ち上げに失敗したことがニュースになっていましたが、そのデブリが3か所に落ちたということで、いろいろな面で今日の授業に当てはまるようです。
A. そうなんです!身近なニュースですね。日本もですが、打上げに失敗してもデブリが海に落ちる地理的要素は、宇宙活動国にとっては恵まれていますね。
C. 今回出てきたコスモス954号事件は20年以上前、大学生時代に国際法の授業で出てきました。確かその時、ソ連はコスモス落下による賠償責任を認めず、あくまで見舞金として支払ったと学びましたが、こういう解決の仕方は国際法の「司法判断を当事国に強制的に受け入れさせられない」という限界と、その限界を踏まえた上で、どう国益に沿うように国際法を利用するか考えられるという面白さを示してるなーと感じます。
A. まさにその通りです。せっかく損害責任条約があるのに・・国際事例がないという状況が続いています。それでも宇宙活動における緊急事態は発生するリスクはありますので・・宇宙活動のルール作りも大切な外交ですし、普段から宇宙活動を通じた国際協力パートナー国を増やしておくことは重要かと思います(それでアルテミス合意の署名国が40カ国にもなっているのでしょうね)。
C. 冒頭で紹介されたGLOBAL COUNTERSPACE CAPABILITIESを知れて良かったです。商用衛星のサイバーセキュリティ脆弱性や、非国家主体による対宇宙サイバー作戦の可能性など、以前聞いた内容を改めて確認できました。例えば在日外国人によるサイバー攻撃で第三国衛星に被害が生じた場合の損害賠償等、予期される事例の事前整理が事態悪化を緩和するかもしれないと感じました。
A. シミュレーション、戦略を打ち出すためにも重要ですよね。SWFはいろいろな活動をしていますので、今後もぜひHPをチェックしてみてください。最新の国際動向が見えてきます。
C. デブリ数増加やその連鎖が未来に悪影響を残す件は印象深いです。個人的妄想ですが、持続可能な社会を世界共通の価値観とした新しい秩序として、環境調和に向けた均衡・相互拘束も最悪一つの手段ではないかと感じました。天秤のイメージで、宇宙での足し算的な各国の勢力均衡は環境破壊となるので、相互に協力できずとも足枷を課せば、引き算的に宇宙から重りが落ちて均衡に至る気もします。
A. いろいろと想像を膨らませてくださりありがとうございます。宇宙法は想像して、近い将来起こるであろう問題を解決していく先見の明が必要な分野かと思いますので・・。デブリ低減という観点から、宇宙活動を抑制させる動きもあってよいのかと思います。これから宇宙活動を始めたい国や民間企業が追い求めるビジョンや利益も考慮した秩序ができるといいですね!
Q. 宇宙条約や今回学習した宇宙損害責任条約では、宇宙「物体」とその構成部分により引き起こされる損害に関しての責任を定めていますが、仮に「物体」ではないレーザーや電磁波などの非キネティックなものにより損害が発生した場合はこれら条約の規律の対象外になるのでしょうか。またこの場合は通常の国家責任により規律されるでしょうか。
A. ご質問ありがとうございます。宇宙損害責任条約の適用において常に問題視されるところです。また、戦闘中のサイバー作戦としてのレーザーや電磁波の使用となりますと、国際人道法の文脈で検討することとなります。攻撃なのか、単なる事故なのか・・。そこの見極めも重要になってきますね。現在ではデブリ低減という国際的な共通認識ができておりますので、衛星自体を壊すというよりは、地上のサーバやモデムを攻撃対象とするサイバー攻撃の方が主流となっています。
C. デブリ問題の解決策について、よく燃える材質の巨大なとりもちでデブリを吸着して大気圏に落とせばいいのではないかと学生時代からひそかに空想していた。実際に世界で考えられているデブリの除去方法がいくつかある中で、ロシアではレーザ照射による除去などが取り上げられているのをネットで発見した。今後そうした装置が運用されることを想像すると、宇宙環境問題の解決策としての装置がASAT兵器の隠れ蓑になってしまい、国家の相互信頼醸成に悪影響がでてきそうだと感じた。デブリの除去方法についても国家は手段を慎重に選択しなければならない。
A. とりもち!聞いたことがあります!実際に研究されていた方がいらっしゃいます。なるべく「兵器」と思われない回収方法があると良いですね。なお、日本の民間企業アストロスケール社はデブリ回収ビジネスを謳っていますが、やはり海外からはADR(Active Debris Removal)の例として報道されることが多いです。
Q. 損害を受けた者が打ち上げ国等4種類の国に賠償を請求する際、どの国にするかは、責任の大きさなど、請求先を選ぶ基準等はあるのでしょうか。
A. ご質問ありがとうございます!特に基準は条約に規定されていません。被害国(者)が迅速に救済してくれるであろう国を自由に選ぶことができます。