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指導教官との付き合い方How to work with your supervisor

博士論文に取り組んでいる大学生を対象に、指導教官とのミーティングに悩んでいる人へのアドバイスです。

指導教官(=担当教授)は、学生さんがスムーズに論文を書きあげられるよう、指導してくれる先生です。優しく分かりやすく、会うたびにモチベーションを高めてくれるような指導を学生さんは期待するかもしれません。

ですが、日本の大学で働く先生の一日は忙しく、大学内の行政業務、授業、授業の準備、試験の準備・採点、学会の業務、助成金への応募申請、自分の研究・・・のほかに、何人もの学生を抱え、テーマの違う論文を同時に指導します。このため、先生があなたの論文に対して費やす時間は限られています。

せっかく苦労して書き上げた論文を持ってミーティングに臨んだのに「まだここまでしかやっていないのか」なんて言われたらショックですよね。ですが、先生も多忙のなかで割いてくれた貴重な時間です。「論文の内容に直結したアドバイス」に集中しましょう。そのためには、学生さんにも準備が必要です。

・前回相談した原稿(2部:自分の分と先生の分)
・前回いただいたアドバイス(2部)
・新たに書き上げた原稿(2部)

この3つは印刷して持参し、自分から「前回指摘されたこの点を今回は直しました」と説明しましょう。そして、限られた時間で的確なアドバイスをもらうため、質問事項はちゃんと決めておかなくてはなりません。

これらの準備は、長期にわたって指導教官と付き合っていくのにとても重要です。なぜなら、多忙な先生は自分で言ったアドバイスを忘れることがあるからです。

(先生)「どうしてこんなことが書いてあるんだ?」
(学生)「だって先生、前回そう言ったじゃないですか」
(先生)「そんなことを言ったか?」

・・・実際に起こるこの会話は、論文執筆の進展を遅らせ、学生さんのやる気まで下げる危険性があります。重要なのはどっちが正しいのかではなく、こういう事態を事前に回避することです。

また、博士論文(修士論文もそうですが)は、学術的貢献度という観点でオリジナリティーを求められます。まだ誰も論証していなかった点を明らかにする・・・。ということは、指導教官が論文のあらすじをすべて教えてくれるわけではありません。逆に、自分の立てた新たな仮説が「正しい」ことを先生に説得しなくてはなりません。

先生とは専門家であり研究者であるため、学生さんよりもその分野の全体像(=学説上の常識)を把握しています。このため、学生さんが立てた仮説に対し、「それは本当なのか?」と質問してきます。仮説を崩すような質問をされるうちに「自分の能力を否定された」と落ち込むかもしれません。

しかし、指導教官とのミーティングとは「先生を説得する」という点が一番重要なのであって、説得できなかったら再度自分の仮説を見直していくしかありません。この作業の繰り返しの末に、博士論文は仕上がっていくのです。専門家である先生を説得できるような論文であれば、それは他の読み手をも説得できる=「博士論文に値する」論文が仕上がったということです。(※これは当HPでお勧めしている本にも書かれています。『社会科学系のための「優秀論文」作成術―プロの学術論文から卒論まで/川崎剛』)

また、指導教官は研究者であり、必ずしも「やる気を起こさせてくれる教育者」とは限らない点も覚えておきましょう。研究者は「常識に囚われず自分で考え抜く探求心」を大切にしているため、学生さんのやる気よりも、その論文の仮説が妥当なのか、きちんと論証されているのかどうかだけが重要なのであり、言葉の選び方・言い方まで配慮できない場合もあるのです。なんせ多忙なんですから。

よって、「指導教官に嫌われた」「また怒られる」なんて気にしないでください。大事なアドバイスだけに集中し、自分の研究の進展だけを考えてミーティングに向かいましょう(指導教官とケンカしていては研究になりません)。

また、心がけによってより有意義なミーティングにすることも可能です。丁寧なメール文章で事前にアポイントを取る、遅刻はしない、ミーティングの終了時間を守る、身なりを(少し)整えていく、厳しい言葉を言われても笑顔を保つ、などなど。これらは就職したら「社会人としての常識」としていずれ覚えるマナーです。覚えておくと得です。

長くなりましたが、博士論文は孤独な作業である一方、とても体力のいる作業です。体を少し鍛えながら、健康管理に気を付けて取り組んでください。指導教官という強健な専門家を説得するのは、本当に体力がいるものですから・・・。

 

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