授業に対する質問・コメントQeustion and Comments

第1回授業1st

Q. 宇宙空間における人工衛星等には管轄権が適用されるとのことでしたが、極端な話ではありますが、例えばある国が月面の一定地域をコンクリートなどで覆った場合、その地域に対して管轄権を主張することができるのでしょうか。

A. アルテミス計画も進んでおりますし、いろいろと想像しますと、疑問も出てきますよね!まず、コンクリートで覆ったエリアについてお話させてください。宇宙条約2条の非専有原則によりますと、国家はいかなる方法でも宇宙空間および天体を専有(領有)することができないため、主権を主張できないと解釈されています。ただ、国際公域としての「利用」は可能です(第1条:宇宙空間の自由な探査利用原則))。このため、コンクリートで覆っているのは、何かしらの「利用」であって、主権を主張するような「専有(appropriation)」ではないと立場を明確にすることが可能です。また、他の国がそのエリアを「利用」したいと言った場合、それを拒否せず受け入れることが大切です。第5回の講義でご説明しますね。一方、宇宙活動における「管轄権」の話ですと、宇宙物体などを登録することで取得できる権利となります。このため、もしコンクリートで覆ったエリアではなく、例えば「ノアの箱舟」のような構造物でしたら、その構造物に対して管轄権が主張できます。月面活動では政府間の国際文書「アルテミス合意」などもありますので、本講義では管轄権について時間をかけて説明していけたらと思っております!一緒に学んでいきましょう!

Q. 現在施行中の国際宇宙法はどの程度法的拘束力を期待できるのでしょうか?

A. ご質問ありがとうございます!国内法と国際法との大きな違いは、違法行為があった場合にすぐに取り締まる警察のような機関がないことですが、国際法の重要な構成要素である国際条約や慣習法は、法的拘束力を有しています。実生活では距離を感じますが、宇宙条約もきちんと法的拘束があります!ただ、条文をお読みになると分かるように、かなり抽象的な用語や表現が多く使われています。これは将来も多様な状況に対応できるよう、いろいろな国が批准しやすいようといった理由があるのですが、国際義務はきちんと履行しなくてはなりません。衛星放送の運用に関する取り決めにしても、宇宙条約に書いていることに反することは書かれていません。また、宇宙空間の軍事利用(防衛や国家安全保障のため)の文脈となりますと、どこまで禁止されているのか不明瞭な事項はまだまだあります。それらを検討している場所として国連宇宙空間平和利用委員会がありますので、第5回以降からご説明したいと思います。

C. 法学について、初めて勉強させていただきました。政治や国際関係の一環として法律を見ることはあっても、法律自体に着眼を置く考え方はしたことがなかったため、新鮮で非常に勉強になりました。引き続きよろしくお願いいたします。

A. こちらこそどうぞよろしくお願い申し上げます!国際法および宇宙技術という軍民両用技術の観点から国際ニュースを見ると、文脈が分かってきて興味深いかと思います!例えば、北朝鮮が1998年にテポドン1号の打上げをした際、国際社会は「大陸間弾道ミサイルの打上げ能力を高めようとしている!」と批判しましたが、北朝鮮は「宇宙条約第1条のもと」人工衛星を打上げたと主張しています。どの国も自由に宇宙活動を行えますので、その主張も正しいのです。ではなぜ国際社会の批判が厳しかったのか。これは北朝鮮が核不拡散条約(NPT)からの脱退表明を1993年と2003年に行っているため、「核兵器+ICBM/ロケット」という大きな脅威があったためです。また講義でいろいろお話していきますね!

Q. 国家主権の及ばない宇宙空間において、民間企業による条約違反があった場合、具体的に「誰が・どのように」裁定し、法執行を行うのでしょうか。

A. タイムリーなご質問ですね。基本的に、民間企業が宇宙活動(ロケットの打上げや衛星運用など)を行う場合、政府(日本では内閣府)から「許可および継続的監督」を得なくてはなりません。このため、民間企業の宇宙活動が、許可(ライセンス)に違反した場合、ライセンスの取消しが行われます。許可の内容は、宇宙条約をはじめとする国際義務を民間企業にも順守させるものではなくてはならず、国際義務やライセンスの違反を見つけるために「継続的監督」が行われます。第5回からの講義で議論しましょう!まだ宇宙ビジネスを展開する企業は多くないため、実際の違反に対する対応はケースバイケースとなります。

Q. 条約上の国家責任について、多国籍企業が関与する場合(例:米国企業 が第三国で発射試験を行う等)は、どの国が優先的に管轄権や責任を負うべきとの解釈が一般的なのでしょうか。

A. ご質問頂きありがとうございます!多国籍企業の場合、まず、その企業の登録した国から、当該宇宙ビジネスに関する許可および継続的許可を得るのかと思います。ただ、ビジネスの内容によっては、国内規制や税制措置など便宜上の理由から(もしくは地理的な好条件から)宇宙活動があまり盛んではない国を選んで登録する企業も出てきます。また、米国など主要な宇宙活動国に登録しつつも、実際に宇宙活動に使う打上げ機や打上船が別の国のものであった場合、事前に関係国間の調整を行うMOU(了解覚書)を交わしたりします。条約上では損害賠償責任を追う国が複数あっても、関係国間でどの国が賠償責任を負うのか、事前に取り決めを行っています。第7回の講義でご説明しますね。

Q. 新規惑星発見時の命名権は主権や管轄権の及ぶ範囲外なのか? →惑星等の名前の命名権は、識別するための符号としての命名であって、そこに主権や管轄権は関係ない、という理解で正しいでしょうか?

A. 楽しいご質問をありがとうございます!はい!その通りかと思います。天文学だけでなく、新しい発見に関しては発見者(私人)の名前を付することはいろいろな分野(例:植物学)で慣行とされていますが、そこには主権や管轄権という発想は必ずしも付随しないです。また、星に関して言えば、「命名したから我が国のものだ」という主張は、上述の宇宙空間非専有原則では許されておらず、もし私人が「月の土地の権利書」を購入しても、実際には物権が伴っていない状況となります。

Q. 宇宙空間の境界について、議論がまとまっていないということは認識できました。現在の主流は、地上から〇kmとは決められておらず、重力の及ぶ範囲という認識で良いのでしょうか?

A. 「国際合意に至っていないが、地球軌道上で物体が周回し始める高度100-110kmとするのが通説(多数説)である」との表現で宜しくお願いします!国際宇宙法の分野ではそう理解されているとお考え下さい。重力や空気といった物理的な要素ではなく・・。

Q. 宇宙空間における管轄権は個人に対しても適用されるのでしょうか? 人工衛星や宇宙船・ロケットがその所属する国家の管轄権下にあるのは理解できますが、宇宙空間に宇宙服を着、作業や遊泳等している場合はどうなるのでしょうか?そもそもそのような想定はないのでしょうか?

A. はい、個人にも適用されます。宇宙条約第5条や第8条など第5回の講義で説明しますね。ありがとうございます!

Q. 講師の経歴について、清水建設の宇宙開発室という部署がどのようなところだったのか関心があります。ゼネコンのイメージしかなかったので、将来的に月で建設する計画があるのか伺いたいです。

A. いまは地上に商業宇宙港を建設する構想もあるみたいです!当時の社長さんが宇宙好き だったという噂も聞きました(笑)。Space Port Japanという団体もありますので、ぜひチェックしてみてください!

Q. 日本の航空業界はICAO方式とのことですが、アメリカにはFAAというのがあると聞きました。アメリカ国内ではICAO<FAAという規則の力関係なのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます!ICAOは巨大な国連機関ですので、国際規制枠組みとなる国際ルールを形成しますが、FAAは米国の航空活動に関する許可を行う政府機関になります。ただ、米国はBoeingなど主要な航空会社もありますし、米国ならではのニーズに迅速に対応するため、FAAでは国内ルールを検討する委員会が設けられたりします。

第2回授業2nd

C. 宇宙空間の境界について、前回「重力の及ぶ範囲」が一般的かという質問をさせていただきましたが、各国の共通認識に近いのは、人工衛星の飛行し得る最低高度ということで理解しました。

A. コメントありがとうございます!良かったです。

Q. 国際法と国内法の関係について、憲法と条約の上下関係は解釈する人の立場や考え方によって逆転すると理解しましたが、航空機の飛行する空域が下位国の管轄権の及ぶ範囲かどうかで変わるのではないのでしょうか?

A. ご質問ありがとうございます!憲法と条約の上下関係の問題ですが、これは国内法と国際法の関係という大きな研究テーマに位置付けられます。本講義(今回は航空法)では、基本的に国際法(条約)が上とお考え下さい。なお、論点によって憲法学者と国際法学者との見解が分かれることはあります(とくに、表現の自由といった国際人権法の分野など)。

Q. 航空機の操縦士は、航空機の所属する国の管轄権下にあり国内法に従うことになり、違う国に所属する航空機同士の関係は国際法によって定められるという認識でよろしいでしょうか?

A. はい!そうなります。操縦士という私人に目を向けますと少し複雑に思われるかもしれませんが、国家同士の約束が国際条約(例:シカゴ条約)で、国がその約束を果たす(順守・履行)時には、通常、国内法を制定します。操縦士は国内法にしたがって運航業務を行います。

Q. 主権と国際的な責任の調整について:国際社会では重大な人権侵害に対し「保護する責任(R2P)」が議論されています。航空・宇宙領域においても、人権保護や安全確保などの観点から、既存の主権の枠組みを補完・調整するような議論や今後の課題があればお教えください。

A. ご質問ありがとうございます。宇宙技術は軍民両用(デュアル・ユース)のため、宇宙活動は国家安全保障に直結する滑動です。また、宇宙空間の特性が、地上とは全く異なるため、「高度に危険な活動」と認識されています。このため、まだ人権に焦点を当てた論点は議論されていません。ですが、アルテミス計画では宇宙飛行士が月面に下りて、いずれ居住するビジョンが掲げられていますので、人権というよりは安全性確保に向けた国際ルールの議論が今後重要となってくるでしょう。

Q. 航空機の定義と領空侵犯について:「空気の反動により浮揚するもの」という航空機の定義に照らせば、気球などはこれに該当しないと推察します。こうした「航空機」の定義から外れる物体が他国の空域に入った場合、国際法上は領空侵犯としてどのように扱われるのでしょうか。

A. 何年前かに、中国の白い気球問題がありましたね。領空内であのような物体が見つかった場合、米国の対応のように撃ち落とすことは主権の範囲内ですのでありえます。破壊することで有毒な物質がまき散らかされないか確認の上ですかね。あの高度で何か衝撃はを出されますと、通信妨害も出ますので、空の安全性や地上のインフラにも深刻な損害がでるかと思います。日本にも以前から発見されておりましたが・・対応されたのか・・何かご存じでしたら講義でお教えください!

Q. 海洋法における旗国制度についで以前少し聞いたことがあるのですが、国際航空法における管轄権も基本的に同じものと考えてよいのでしょうか。何か差異等があるのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます!旗国制度との違いですが、宇宙物体は打上げられた後に、登録により管轄権・管理権が付与されるものの、実際の運用国がその後変わっても、初めの登録国のまま更新されません。また、登録は「国籍を付与する」ものではないため、旗国制度とは異なる点が指摘されています。

Q. 本日のスライド15の「4 航空機の定義」についてですが、航空機の定義は「大気中における支持力を、地表面に対する空気の反作用以外の空気の反作用から得ることができる一切の機器」についてですが
1 グライダーは地表面に対する空気の反作用で飛行するから航空機にならない。
2 航空機は翼による地表面に対する空気の反作用に加えてエンジンによる動力で空気の反作用を得るため航空機
という理解で正しかったでしょうか。
また、ヘリコプターは、反作用を得るためにエンジンによる動力で回転させることが前提になるため、純粋なプロペラ(回転翼)が飛行のための反作用を生み出すものではないため、航空機という分類になるという理解でよろしいでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます!@のご理解のとおりです。A「加えて」ではなく、あくまでもエンジンで作り出した浮揚力のみで支持される、とご理解ください。ヘリコプターの定義につきましては、「純粋なプロペラが飛行のための・・」という物理的な理由も確かにそうかもしれません。基本的にエンジンによる動力で自ら浮揚力を作り出しているため定義に含まれると考えるので良いかと思います。

Q. ICAOは、国連の専門機関というお話でした。国連では、中華民国が中華人民共和国に追い出されたり、まだ未加入の国や地域があったりすると思います。一方で、台湾には多くの旅行客が航空機で行きます。ICAOでは安全な航空機の運航を優先して各国の思惑や主張をうまく割り切っている感じなのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます。国として認めるか否かという政治的な思惑も絡んできますので、国連でもいろいろとケースバイケースで対応しています。これは外務省や航空会社の法務の方で、ICAO総会に参加されている方に訊いてみたいですね。なお、まだ旧ソ連だった時代、略語がU.S.S.R.で、米国がU.S.ですので、国連の会議で隣同士の席が用意された時があったそうです。バチバチだったと・・(私が国連のインターンだった時に聴いた昔の笑話です・・笑)。

C. 「なんとなく」かつ「たまに」しか見なかったNOTAMやフライトプランの重要性がよく理解できる回でした。恥ずかしながら、航空自衛官でも、パイロットや管制業務に携わらない職域の隊員はそう言った資料の読み方が分からない、読めたとしてもいつどこでどんな飛行機が飛ぶ以上の情報が理解できないというのはよくある話で、私の認識もせいぜい空域管理に活用するのだろうという程度の認識でした。NOTAMの発行、フライトプラン提出にすることは、近傍の航空施設間で情報共有し、交通の安全な運用ためにも重要なシステムであることを強く認識できました。

A. 貴重なご感想をありがとうございます!宇宙業界でも「NOTAM」を知る人は実は少ないです。ですが、衛星打上げを行う際は必ずNOTAMを出しますし、ICAOだけでなくIMO(国際海事機関)にも事前通告を出します。このNOTAMは特に宇宙条約には記されていないため、実務家以外には知られていませんが、国際慣行として重要な事前措置です。なお、空域はGPSといった測位衛星システムからの信号を受信することで位置情報は比較的得られやすいのですが、海域はまだまだ技術的な課題も多いです。宇宙法の講義の時にお話したいと思います!

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