授業に対する質問・コメントQeustion and Comments

第7回授業7th

Q. コスモス954号の事件以降、宇宙損害責任条約や、宇宙救助返還協定が活用された事例がないというお話の中で、自国の情報収集能力が露見することを嫌がることも理由のひとつとして挙げられていたかと思いますが、なぜ活用されないかの議論になるとよく挙げられる理由ということでしょうか?自国の能力を全力で稼働するのではなく、ある程度の余裕を持たせたうえでの情報公開や証拠の提出にすれば問題ないのではないかと感じました。また、逆の立場になったときの報復が怖いというお話もありましたが、相互に活用していく方が条約や協定を形骸化させなず、むしろ国際法の立場を向上させるのではないかとも思いました。

A. ご質問ありがとうございます!講義では「報復」という用語は使っていなかったかと思いますが(笑)、「明日は我が身」と話しましたね(笑)。宇宙活動は「高度に危険な活動(ultimate hazardous activities)」と認識されることから、宇宙損害責任条約も国際法上、例外的に「過失がなくとも全額賠償」という重い責任を打上げ国に課しています。国はどの条約に基づいて訴えるかを自由に決められますので、「使う」「使わない」という理由は、その事案の性質や国の戦略(文化も?)によります。国内裁判と異なり、国際裁判となれば外交上の関係など、いろいろと検討が必要となるので、、国際裁判は最終手段として残しておき、まずは外交で解決する・・のでしょうね。

C. 宇宙損害賠償条約に関して、国際法によって被害者、被害国に対して手厚い救済措置が設けられていることが、かえって被害申し立ての妨げになっているという指摘は思ってもみないことでした。国際秩序は国内秩序とは性格を異にするというのは安全保障やアナーキズムの文脈から多少聞いたことがありましたが、国際法の世界では、その差異がこのような形で現れてくるのは興味深いと感じました。

A. コメントを頂きありがとうございます。国際秩序の維持はどの時代も難しいですね。本条約が起草された時代、打上げ国となる国は米ソ(ロ)のみでしたし、一つの衛星も巨大なものでした。現在は小型衛星を大学も打上げる時代ですので、そろそろ条約のアップデートも必要なのかもしれませんね。

Q. 他国からのレーザー照射に対して弱点の露呈を恐れて賠償請求を見送る場合があるという点は、従来領域との類似性と法と実務のギャップの観点から、とても印象深かったです。自分の損害を隠匿して相手の効果判定を欺瞞するという考え方は従来から行われてきた対応であり、宇宙分野でも共通することは意外でした。また、国際法上の権利行使より能力秘匿という安全保障上の合理性が優先されるという法と実務のギャップの存在も印象に残りました。

A. ご知見をご共有下さりありがとうございます!他の分野でもそうなのですね・・。宇宙技術、とくに衛星アプリケーションは技術発展が著しいため、1件ごとに裁判や外交問題として扱っていては時間がもったいない・・という理由もありそうですね。また、宇宙活動はどうしても他国の協力が必要という側面もあります。自国が打上げた衛星の追跡には、他の国の追跡ネットワークを使うこともあります。良好な外交を保ちたい(優先したい)というインセンティブも働くかもしれません。この点、法学者ではなく実務家(実行部隊?)のご見解もお伺いしたいところです!

Q. 宇宙活動で争いがあった場合に、ICJに提訴する方法があるということでしたが、ICJには、宇宙法専門の裁判官がいらっしゃるのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます!歴史的にはICJの判事のなかで宇宙法の発展に貢献してくださった判事としてマンフレッド・ラクス判事が有名でいらっしゃいますが、現在の宇宙法模擬裁判の名前も同判事の名称がつけられています。基本的に、ICJ判事はいろいろな法分野にご対応されるため、〇〇の専門家というわけではありません。

Q. 以前、私の友人が海の上(携帯電話の電波圏外)で事故に遭遇しました。しばらくすると、通報していないのに海上保安庁が助けにきてくれたそうです。友人はアイフォン16をもっていて、どうやらそれが衝撃を感知して自動的に通報してくれたそうです。今思うと、これはアイフォン16がコスパス・サーサットを利用したのではないか?と思いました。

A. それは怖い事故でしたね・・。私も少し調べてみたところ、406メガヘルツ帯の信号(コスパス・サーサット)ではなく、iPhoneはLバンド(1.5-2GHz帯)という別の衛星用周波数帯を利用して緊急SOSを出すそうです。送信内容はメディカルID、現在地(高度を含む)、バッテリー残量が救助隊に共有されるそうです。すごいですね!!!iPhone14以降からある機能だそうです。

Q. 先週、ニュースでISSのロシアモジュールから空気が漏れて、クルーが脱出ポットに一時避難したのを見ました。このとき、宇宙救助返還協定の発動予令が国連事務総長にされたり、大気圏突入した場合の予想着陸点の国への救助協力要請などあったのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます。ISSに関しましては政府間協定(IGA)や関連する二国間協定があり、事故に対応できる枠組みはすでにできております。宇宙救助返還協定は、地球上に不時着した場合の返還における諸対応が主に定められております。・・それにしても・・ISSの搭乗員は・・大変でしたね・・。

C. 条約上の表記で、「打ち上げ機関」としていましたが、スペースXをはじめとした民間宇宙事業者とその役割が大きくなっている側面から、締結当初にその表記を選んだことが改めて最適解であったことを示しているように思いました。

A. 積極的にいろいろと考えて下さりありがとうございます!Launching StateではなくLaunching Authorityとした理由は、国際機関を含める意図があったようです(参照:S. Hobe (eds.), Cologne Commentary on Space Law, Volume II, Carl Heymanns Verlag, 2013, pp.72-73.)。やはり莫大な賠償額を背負うのは国でして・・民間企業が賠償責任を追う主体となることはないのです。この点を補うため、宇宙保険というものもあります。民間企業は打上げ許可を政府へ申請する際、(宇宙)保険に入っていることが申請(もしくは許可付与)の条件の一つであったりもします。ご関心がありましたら宇宙保険も調べてみましょう!

第8回授業8th

Q. 静止軌道上のスロットをビジネスに転用しようとした民間企業「トンガサット」の話がありましたが、事件の詳細を検索してみると、内紛と王族の汚職などが重なり、軌道スロットの管理は「トンガサット」からトンガ王国へと移管されているとのことでした。
静止軌道上のビジネスとしては、静止軌道上の衛星への整備や燃料補給の提供が注目されているとあり、さらに廃棄の方法としては墓場軌道(グラベヤード・オービット)への移動が最も妥当だというような情報もありました。低軌道では大気圏で燃やすことで消滅するかと思いますが、墓場軌道に押し出すだけではそのうち廃棄された衛星で一杯になってしまうのではないのでしょうか?

A. いろいろと調べて下さりありがとうございます!そうでした!トンガでした!講義中に思い出せず失礼致しました。静止軌道上のビジネスは「軌道上サービス(On-orbit Services)といって、一番注目されるビジネスです。墓場軌道がいっぱいになることはないのですが・・静止軌道より以遠といっても、月や火星に行く際には通るゾーンでしょうし・・逆に追跡が難しいかもしれないので・・デブリ管理がより一層重要になってきますね。

Q. 宇宙物体登録条約では地球を回る軌道に存在しなくなったものについて通報するとなっていますが、地球軌道以遠を目指す探査衛星などはどの段階で通報することになるのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます。「どの段階」というのは各国ごとに異なるのかもしれず、実務のことなので分かりません。毎年COPUOSでは各国の宇宙活動の状況が報告されますが、活動中のものは報告しても、ミッション終了については報告しないですしね・・。機会がありましたら実務家に訊いてみましょう!

Q. ispaceなどのように打ち上げに失敗した場合、それらはまだ宇宙物体として所有権があるのでしょうか?それともスペースデブリ扱いになるのでしょうか?

A. ご質問ありがとうございます。確かに残骸は月面にありますものね・・。月の南極域では軟着陸に失敗したロシアのNPS搭載衛星の残骸もあるはずですし・・・。わざわざ高コストで月面までいって、他国の残骸を集めようとする例がないため・・問題になりませんが、いざ「回収した!」と声明がだされましたら、即刻「救助返還協定に従って返してください」と言われそうですね(笑)。でも、何も声明が出されていないだけで・・実は回収されていたら・・怖いですね。

Q. 国連の宇宙物体登録条約には「国名」を登録するという記載が度々登場しますが、台湾のような国連に加盟していない(させてもらえない)地域がもし宇宙物体を打ち上げた場合、登録できないということになるのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます!禁止している訳ではありませんので、できないということはないのですが、何か工夫がされているのかも・・。別の履修生が調べてくださったところ「UNの登録簿には北朝鮮、台湾は発見できませんでした。」とのことです。https://www.unoosa.org/oosa/en/spaceobjectregister/index.html

C. ラグランジュポイント2に中国が進出している状況で、ラグランジュポイント1にアメリカが影響力を持とうとすることに、軍事的な意図を感じました。L2に行くためには、L1を経由するしかないと思いますので・・・。

A. 貴重なコメントをありがとうございます。実際はと言いますと・・L2に衛星を配備する技術を持っているのは中国だけなのです・・。月の裏側にローバ―を走らせることができるのも中国だけですし・・月面ではかなり先を行っておりますが、中国はあくまでも「科学目的」であり、軍事目的とは言っておりません。このため、米国は「新たな宇宙競争(Space Race)が始まっている!」といっても、中国は「こちらはそうは思っておりません」と回答しています。今後も注視して参りましょう!

Q. 「登録」と「国籍」の違いについて、理解が不十分な気がしております。登録国として管轄権を主張できるのであれば、違いが無いように思えるのですが、国籍と違って制限される事項や責任が曖昧になるようなことがあるのでしょうか?

A. ご質問ありがとうございます。青木節子先生の有名な論文があります!ぜひ読んでみてくださいませ。青木節子「宇宙物体の『国籍』」国際法研究 (9) 1-21頁 2021年3月.

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