授業に対する質問・コメントQeustion and Comments

第7回授業7th

C. 衛星の解像度問題については、衛星が測位した地上標高データを修士論文に使用しているため興味深い話だった。データを収集する際、NASAやJAXAの公開データもその目的に応じて解像度が使い分けられている印象を受けたので、本講義での学びと一致していると感じた。

A. コメントありがとうございます!そうですね、解像度が高すぎると他国に脅威を与えるリスクはあるため、ミッションの目的に合わせて解像度を下げたり、外交上の問題を回避します。一方、災害が起こった際、被災国には国際協力のもと、安い価格で災害地のデータを譲るといった慣行もあります。

Q. ロシアがフィンランドといったウクライナ戦争とは直接関係のない第3国との国境付近の地上でGPSの妨害を行っているとの報道がありました。このような行為は宇宙法でも戦時国際法でもなく他の国際法の一般原則などが規律するのでしょうか。

A. ご質問ありがとうございます!そのように無線周波数に「有害な干渉(harmful interference)」を生じさせる行為は国連電気通信連合(ITU)憲章第45条違反となります。ただ、ITUの制度は紛争解決に関して強固な是正措置を持たないことがネックです。この講義のなかでもITUについてご説明する回がありますので、ぜひ議論しましょう。

C. GPSのようなGNSS利用について、各国には運用継続義務も賠償責任も有していない件は改めて印象に残りました。ウクライナ侵攻直後のモスクワ周辺のGNSS精度低下のような事例もある中、国民生活全般の依存度が大きい割に補償がない問題点はいずれ顕在化する気がしました。各国が莫大な費用をかけて自国システムを追求する理由の一つになっているのも納得しました。

A. 確かに・・現実を知ると驚きますよね。しかもGNSSは測位だけでなく、国際的に統一された(正確な)時間を確保するという機能も提供しています。例えば、金融業界で株の売買の時間などが各国によって異なるのは非常に困りますよね。GNSS保有国の国際的な影響は大きいため、ウィーンにある国連宇宙部(UN Office for Outer Space Affairs)では「国際GNSS委員会 」が設置されています。そこでGNSS活動に関する情報が共有されています。

C. 宇宙法において、宇宙飛行士は現在のところ宇宙への進出の難しさから「人類全体の使節」という扱いになっているのは理解出来ました。ただ、そうなると今後技術が発達してより軽易に宇宙空間に進出出来るようになった場合、そうした前提を変えないといけない問題が生じる可能性ってあるのかという疑問は感じました。

A. コメントありがとうございます。確かに、宇宙諸条約が起草された1960年代と現在とを比較すると、宇宙に行く人が確実に増えており、宇宙へ観光目的で行くケースも増えましたね。アルテミス計画のもとでは月面居住計画もあるため、宇宙ワーカーというカテゴリーも出てくるかと思います。人命の保護という観点から、新しいルールができそうですね。

C. 請求するプロセスについての話で国の外交政策によって異なる場合があるところが気になりました。

A. コメントありがとうございます。外交政策の影響は確かにありそうですね。また、適用したい条約も、1969年宇宙救助返還協定か1972年宇宙損害責任条約か・・など、いろいろと意見が分かれるかと思います。まだ請求委員会が設置された例がないのでなんともいえませんが・・まずは3名の委員を選出する時点から・・合意に時間がかかりそうです・・。

C. MEOSARの話で技術の発展が迅速な救助活動対応に役立っていることがすごくいいと思います。一方で、たった3つの国がこの技術を持っていて、その技術が意図されていない方法で他の国よりも優位性を持つ可能性があると思います。

A. 宇宙技術は先端技術であり、戦略的技術であり、そして・・軍民両用の技術です。やはり宇宙活動国は国際的な影響力を持つという点は否めません。このため、宇宙活動における透明性を向上させることで、他国に脅威を与えないという透明性・信頼醸成措置(TCBM)が国連で検討されています。講義もありますので、その時にまた議論しましょう!

C. 技術的な面での各国の思惑が各種の“決まり事”に影響していくという過程を、国内法でもそうなのだと思いますが、改めて知ることができ、とても大きな気づきになりました。特に、シャッターコントロールや戦略的技術の定義について、実務で色々な方からお話を伺ってらっしゃる先生から聞くと、深く納得させられます。シャッターコントロールについては、直接ではありませんが、実務でも経験していたので、それらの経験とつながり、同時に、自国での宇宙開発の重要性、アセット保持の重要性を、改めて認識させられた次第です。

A. コメントありがとうございます!宇宙空間だけでなく、南極や深海底においても、技術を有する国がルール作りに参画するため、自然と自国の国益に沿った国際ルールを作れる機会に恵まれるかと思います。日本は技術力は高いので・・あとはそれをどう外交政策に活かすか・・といった点がよく課題として挙げられます。

第8回授業8th

C. 月探査の日程や地点、経路などが思ったよりもバッティングしてしまいそうな状況があることが分かった。そうした状況では、探査計画の段階から月協定第2条の「妥当な考慮」をあえて押し付けるような悪用や濫用の危険性や独占欲と国家関係に左右されそうな要素が存在すると感じた。

A. コメントありがとうございます!月探査レースが始まってもう10年となり、月探査に求めるものも科学調査から資源ビジネスと多岐にわたってきています。そして、国家だけでなく「ニュースペース」と呼ばれる民間企業もどんどん参画しています。「妥当な考慮」は宇宙条約第9条1文に定められているので、月協定を批准していない国でも国際義務として課されています。ただ・・違反の基準がまだまだ曖昧なところです・・。第9回の講義では「アルテミス合意」の説明もしますので、紛争回避のためのルールを一緒に確認していきましょう!

Q. アルテミス合意に参加するため月協定から脱退する国があるとの話がありました。月協定よりも宇宙開発国の広範な参加があるアルテミス合意が、月協定に代わって国際的な規範になる可能性はあるのでしょうか(条約に発展するなど)。

A. 質問ありがとうございます。次回の講義で詳しくアルテミス合意をみていきますが、前文で「政治的な合意である」と明記しています。ですが内容は宇宙条約をはじめとする法原則がいくつも記載されているんですよね。実質的にはソフトローかと私は理解しています。また、条約を好まない米国が主導しているため、条約になる可能性は低いと思いますが、ルールの遵守は署名国に求めてきますので・・。今後の規範形成に注目な文書です!

C. 宇宙物体登録遵守についてSSA向上も一助となる点は印象に残りました。今後衛星が小型・ステルス化する可能性もある中、見える化の発展が信頼醸成措置の機能となり、宇宙における安全保障のジレンマ緩和に繋がるものと認識しました。一方、スペースパワーとシーパワーの共通点からの類推で、「海『で』できること」→「海『から』できること」へ拡大した歴史的に、スペースパワーも宇宙『から』地表目標への戦力運用が予想され、デブリとの判別基準含め、国際政治における登録に対する方針は注視する必要性を感じました。

A. コメントをありがとうございます。見える化(可視化)が宇宙での武力行使(もしくはASAT実験)の抑止になる可能性はあると思われ、その点はジュネーブ会議の宇宙空間軍拡回避(PAROS)委員会でも1993年に報告書がまとめられています。しかし近年のロシアによるASAT実験(2021年11月)などを見ていますと、なかなかそう言い切れない状況があるのも事実です・・。また、「宇宙でできること」から「宇宙からできること」への転換は宇宙安全保障の文脈ですでに認識されています。シーパワーの方を私は存じていなかったので、そちらも注視していこうかと思います。

C. 宇宙物体の登録に関して弾道飛行する再利用可能なロケットの話が出てきていましたが、将来的に出てくるであろう往還機=大気圏内で自由に飛行でき、自力で大気圏内外を往来可能な物体なんかも、航空法に基づき扱われるか宇宙法に基づき扱われるか、それとも両方で扱われるかで事故時の責任や賠償の観点から議論になりそうな気がします。

A. コメントをありがとうございます!そうなんです・・。航空法と宇宙法との整合性が問われるのはまさに往還機の運用においてです。私もちょうど商業宇宙港に関する論文で扱いました。"Legal challenges to the operation and use of commercial spaceports" <https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2468896724000351>講義の中で資料としていつかご紹介しますね。

Q. 共同ミッションで異なる国の人々が関与した問題が起きた場合、国籍以外で、どちらの国のモジュールで起きたのかとか色々関与してくると思いますが、こういった場合にどちらの国の法律が適用され、外交手段や国際仲裁を通じてどのように解決することができますか?

A. 質問ありがとうございます。ISSのような大型有人居住モジュールを想定されているのかと思いますが、ミッション毎にあらかじめ政府間協定のような取決めをしていくのかと思います。条約上ではすべての国が「打上げ国」となっていても、事前の取決めによって、詳細事項(実際に適用する法律や紛争解決方法など)について合意しておくのが慣行かと思います。

Q. 共同ミッション(例であった:A国、B国のモジュール)での意思決定主導国はどのように決定されるのか。1年ごとに交代するサイクルとかがあるのでしょうか。

A. ISSの例でいえば、ISSに関するIGA(政府間協定)がすべてのパートナー国で署名されますが、より詳細な事項については(例:実験の成果に関する特許など)、二国間協定で定めています。次回、アルテミス合意の説明のところで触れるようにしますね。

Q. 月協定を扱っていた最中に、調査等に関して各国がその場所を占有するという懸念が示されていたかと思います(勘違いだったら申し訳ありません)。確かに、天体において国家主権を行使することはできませんが、宇宙船をそのままモジュールとして使用した基地を“着陸”させ、その一部という扱いで基地を拡張し、その範囲は規律管轄権・執行管轄権が及ぶ範囲だと主張することで、事実上の領土化を図る、という手法を使用する国が出てくるのではないか、と思いましたが、こういった、旧来の決まりを破るような手法を、宇宙条約や宇宙物体登録条約は想定しているところはあるのでしょうか?

A. 月面で実際に起きかねない事態をご想像してくださりありがとうございます。そのとおりです!ですので・・私もいつも「基地モジュールや宇宙資源施設を作るときは、少しでも可動式なものにすると良いと思います!」と伝えて参りました(笑)。次回の講義ではアルテミス合意の「安全区域(safety zone)」について説明しますね。まさに各国の「専有」を回避するために講じられたルールかと思います。

ページトップへ戻る
Copyright (c) 2013 Yuri TAKAYA All Rights Reserved.