授業に対する質問・コメントQeustion and Comments
第7回授業7th
C. 授業を通じて、この(宇宙物体返還)協定が策定された1960年代とは異なり、現代はSpaceXなどの民間企業が宇宙活動の中心になりつつあることが印象に残りました。協定の枠組みを現代の状況に即して発展させ、企業も主体的に責任を負う新しい条約や補完的な協定が今後必要になるのではないかと思いました。
A. コメントをありがとうございます。90年代から台頭した宇宙ビジネス(主に衛星放送や地球観測データなど)は、衛星自体の打上げ・運用は政府機関(JAXAなど)が行い、データのみを民間企業が扱うというのがビジネスモデルでした。しかし今や、打上げや惑星探査そのものを行う技術や財政源を有する民間企業がでてきたため、国家と民間企業が行う宇宙活動の差が少なくなってきています(宇宙活動国に限られますが)。このため、国際宇宙法が抱える近年の課題は「いかにして民間企業に国際義務を履行させるのか?」という点に集約されます。なお、現在は宇宙条約第6条において、国家は自国民の宇宙活動に対し「許可」および「継続的な監督」を行う義務があるため、民間企業による宇宙活動は国家による監督を通じて、国際義務に服するという間接的な履行アプローチとなっています。
Q. 宇宙法において、責任を負うべき打ち上げ国が不明な場合については規定されていないという理解でよいでしょうか。宇宙空間で分離した物体などは追跡が難しい場合もあるのではないかとも思うのですが、そのような場合でも責任の帰属を主張できる程度には打ち上げ国を明らかにできるのかどうか気になります。
A. ご質問ありがとうございます。衛星打ち上げで使われるロケットは、切り離し部分が非常に大きいため、かつてはそれぞれ宇宙物体として登録されたりしました(第8回の講義:宇宙物体登録条約でもお話しますね)。現在では宇宙空間にある物体を監視できる宇宙状況把握システム(Space Situational Awareness: SSA)がありますので、打上げた宇宙物体の打上げ国が不明という状況はかなり少なくなってきています。しかし、過去に生じた宇宙デブリの破片によっては打上げ国が分からないこともあるかもしれません。また、宇宙デブリから生じた損害に、そもそも宇宙損害責任条約が適用されるのか・・という点についても見解は分かれています。また、宇宙デブリ回収ビジネスにおいてActive Debris Removal(ADR)を行う場合では、まずその宇宙デブリの所有国を明確にする必要があります。こちらは講義の宇宙デブリの回でお話しますね。
Q. もしGNSSが使えなくなったら、国際的な海上救難体制はどう変わるとおもいますか?
A. ご質問ありがとうございます。国際的な海上救難体制は、もともとGNSSを使わない形で構築されてきたようです。ですが近年ではLEOSARやGEOSARなどで精度が向上しているそうです。年々技術が向上するため、定期的に確認したいプログラムです。〔関連情報:https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2024/html/honpen/1_04_chap2.html〕
Q. 内陸国は海上救難におけるGNSS協力で果たせる役割は地上局の提供、衛星管制、技術協力、教育研修のホストなどが挙げられるという認識でよろしいでしょうか?
A. はい!そのような理解になるかと思います。日本における地上部分の貢献に関する文書が見つかりました。こちらもどうぞご参考ください。〔https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-H5-0169.pdf〕
C. 宇宙損害責任条約が発効以来、コスモス945号事件以外直接適用されたことがないという事実は意外でした。幸い、必要となる大事故がなかったのと、個別の二国間交渉で処理されてきたということですね。しかし、今後宇宙ビジネスが更に興隆した場合には、同条約も必要とされる可能性もあるでしょうし、現在曖昧になっている部分等の課題が浮き彫りになるのではないかと思いました。
A. 本当ですね。私もヒヤヒヤしています(笑)。現在、宇宙活動国のみならず民間アクターの数も増え、また、一つの軌道に何千もの通信衛星を配備するメガ・コンステレーションも、米国のほか中国が始動しているため、宇宙物体による損害リスクは確実に高まっているかと思います。〔関連記事:https://www.cnn.co.jp/fringe/35215655.html〕
C. 宇宙飛行士が大変素晴らしい特別な仕事であると素朴に思っていましたが、宇宙条約において、「宇宙空間への人類の使節」(envoys of mankind in outer space)という崇高(ロマンチック?)な文言で明記されていることには驚きました。そのような理念の下で、各国に援助等の義務が課されている訳ですが、授業最後に高屋先生が補足して頂いた通り、今後民間の宇宙旅行が更に増えてきた場合に、従来の宇宙飛行士のような特別な位置付けとするのかは論点になり得ると思いました。
A. コメントありがとうございます。月面有人居住計画もありますので、科学ミッションのみならず、宇宙資源の掘削といった労働者(labor)という立場で月面に行かれる方も増えてきます。職種により救助支援の内容が変わることはあってはなりませし、迅速な救助を目指した指針などが作られると良いですね。現在でも月面軟着陸はとても難しい技術ですので、月面で人がいる場所に探査機が撃墜することがないように・・避難ルートを含め、具体的なルール作りが必要な分野です!
第8回授業8th
C. 宇宙物体登録条約は、宇宙活動に関する透明性と国際的な信頼の構築を支える重要な国際法規範であると理解しました。宇宙空間の利用が急速に拡大する中で、各国が打ち上げた物体の登録と、その情報の公開は、事故や責任問題の際に不可欠な資料になると思います。しかし、実際の運用においては、登録情報の内容の変化があったり、非協力的への対応など、理論と実務のギャップもあるのではないかと感じました。特に今後、民間企業や多国間プロジェクトの関与が一層増える中で、現行の制度がどこまで機能し続けられるのか、登録条約の実効性や将来像について議論していく必要があると感じました。
A. コメントありがとうございます。登録内容を確認する第3機関があると良いですね。ですが、あまりはっきりと「これは軍事衛星じゃないのか!?」と嫌疑をかけると、それだけで外交問題になりそうです。今後、月面においてもどこに何があるのか、宇宙ミッションが終わった探査機の残骸がそのままにしてあるため、他の国のローバが進めない・・なんてこともありそうです。とくに、原子力電源(NPS)を搭載した衛星や探査ローバなどは、きちんと登録して、かつ、位置情報もリアルタイムで公表して欲しいですね。この講義でも扱うテーマです。
C. 国家に対し宇宙物体の登録義務が課せられていることから、民間企業に対し宇宙活動の規制枠組みが設けられていることを認識できました。打ち上げ国に賠償責任が課せられることから、登録国や実際の所有・運用主体との差異は、今後多国籍企業が宇宙ビジネスへ参入する上でさらに問題となっていくように感じます。 月協定を主導したアルゼンチンによるいわゆる先進国の寡占に対する警戒感も理解できる一方で、実効性に欠けるものとなってしまった点で国際法の難しさがあるように思いました。
A. 本当ですね・・。内容的には素晴らしくても、自国が主導しなければ署名しない?第9回の講義では人類共有の財産(CHM)や宇宙資源に関する制度に関する条項も勉強するので、批准しない理由がいくつあるのかという問題意識で、一緒に考えてみましょう!ちなみに・・批准する国の過半数の同意をもって、条約の内容を変更できるという条項もありますので、選択肢はあるんですけどね。
Q. 活動をできるだけ秘匿したい軍事衛星等の場合は、宇宙物体登録(国連事務総長への通報)自体を行わない場合もあるのだろうか?と疑問に思いました。以下の青木先生の資料(2009年)2頁では、「軍事衛星は、最近は登録する傾向にある」が、「宇宙物体の一般的機能は抽象的な記載となる」、「国連が公表した約400機の未登録衛星リストの中には、米、ロ(ソ連を含む)、中の軍事衛星が多い」と指摘されています。推察しますと、かつては、これらの諸国が未登録のままで軍事衛星の秘匿性を維持しようとする傾向があったが、宇宙監視技術等が向上し、存在自体を秘匿することも困難になったため、未登録のデメリット(管轄権を主張できない)の方が大きくなったことから、登録するようになったのではないでしょうか。
〔青木節子「宇宙物体登録の現状と日本の選択肢」(内閣府資料)関連URL: https://www8.cao.go.jp/space/archive1/housei/dai2/siryou2.pdf〕
関連して、打上げに複数国又は民間主体が関与する場合に、「誰が国連に通報すべきか」不明瞭なまま明確な通報が行われなかった事例も複数あるようですね。
〔青木節子「衛星の所有権移転に伴う『打上げ国』の損害責任問題」関連URL: https://space-law.keio.ac.jp/pdf/sky_method54.pdf〕
A. よく調べられましたね!ご共有いただきありがとうございます。ご指摘の通り、宇宙監視技術の能力が上がってから、確認される宇宙物体や宇宙デブリの数が劇的に増えたことに加え、追跡ソフトウェアの性能があがったことで、衝突予測や衝突経緯をたどることが可能となりました。これらの技術により、宇宙空間における損害が発生した際、どの国による「過失」だったのかが明確になると良いのですが・・。
C. 今後の講義で扱われるかもしれませんが、地球と月の周辺である「シスルナ空間」の重要性が近年高まっているとの解説に関心を持ちました。特に興味を惹かれたのは、二つの天体の重力と遠心力が釣り合う「ラグランジュ・ポイント」は、各種機器や中継・補給基地を設置する場所として高価値を有するということで、近年各国による「争奪戦」の様相も出てきているという指摘です。人間にとっての空間には、「戦略的要衝」というべき場所とそうでもない場所があるという思考を「地政学」とするならば、宇宙時代にあっても地政学は続くのだろうと考えます。
ちなみに、「宇宙時代(宇宙世紀)」を舞台にした日本を代表する某アニメ作品でも、ラグランジュポイントは、居住地、軍事要塞、補給基地等の設置場所となっていました。フィクションですが、あながち間違っていなかったのだなと思いました。
A. コメントありがとうございます!そのアニメは・・・ガンダム・シリーズでしょうか?あれは面白いですよね!中継・補給基地になるとすれば・・その分、宇宙ゴミもそこに留まるのでしょうかね?
Q. 条約を履行していない、あるいは署名していない国への対応は何でしょうか?例えば、宇宙活動が活発で加盟していない国(DPKR)の場合はどうなるのでしょうか?
A. 基本的に、国家は条約に同意(署名・批准など)することにより、条約が定める権利や義務を有することになります(すでに慣習国際法となっていれば、同意していないてもその権利義務が発生します)。このため、批准していない国は、その条約に縛られることはありませんので、何ら義務違反も生じません。
C. 月協定について,宇宙条約第4条の宇宙空間平和利用原則において「平和的(Peaceful)」の解釈が1962年以降「非侵略(Non-Aggressive)」となっていることに対し,月協定(1972年)での「平和的」の解釈が未だコンセンサスが得られてない点にステークホルダーの変化(途上国の参画等)に伴う意見の相違に加え,時代における各国の思惑の変化も影響している様子が伺え勉強になりました.
A. コメントを頂きありがとうございます。説明不足で申し訳ありませんでした。前者の「非侵略的」という解釈は多数説(通説)になったというだけでして、「平和的」の解釈は宇宙条約および月協定ともに確定していない状況です。なお、国際宇宙法学会(IISL)の方で現在、月協定について再検討をしているようです。
◆関連URL:https://iisl.space/iisl-working-group-on-the-future-of-the-moon-agreement/
