授業に対する質問・コメントQeustion and Comments

第1回授業1st

Q. 小惑星採掘や宇宙旅行などの新興技術に宇宙法の原則/法はどのように適用されるのでしょうか?

A. 質問ありがとうございます!国際法は一般的に「国家の権利および義務」を定めるものです。このため、新しい技術に適用されるのではなく、その技術を使って活動する国家に適用されます。もしその活動が国際義務に違反していたら、その責任が国家に追及されます!

Q. 空域(air space)と宇宙空間(outer space)の境界画定協議に関する各国の動向について、協議では画定に向けて各国は積極的に検討している様子が確認できるのか。それとも、領空と密接に関係する空域と宇宙空間の境界を曖昧にしておくことで国家(先進国・大国)の利益を確保するような様子が見られる状況であるのか。境界画定の問題における国家それぞれの熱量について概ねで構わないので知りたい。

A. 国際法において宇宙空間は定義されていないですが、積極的に定義したいという国は少ないです。特に米国が境界線の策定を避けてきました。その理由は主に2つあります。1つは、冷戦時代、敵国を偵察するスパイ衛星を、なるべく低い高度で運用したかったから。もう1つは、クリントン政権の空軍は、軍事活動の空域を少しでも広く(高く)確保したかったから。一方、ロシア、中国および発展途上国の一部は、境界線が必要と主張しています。その理由はいくつかありますが、次の講義で説明しますね!

Q. 宇宙に関する条約とその批准について、宇宙救助返還条約・宇宙損害責任条約・宇宙物体登録条約の施行年には差があるが、日本がこの3条約に批准したのはさらに時間を置いて1983年となっている。ここには何か日本において特別な動きがあったのか。それとも批准に向けた検討に時間がかかるような背景があったのか。

A. 本当ですね。宇宙条約に限らず、日本は国際条約の比準に時間をかける傾向にあります。例えば、2001年ブダペスト条約(サイバー犯罪条約)は2001年に採択されていますが、日本が批准したのは2011年です。その理由は、条約の義務を履行するための国内法整備に時間がかかったそうです。宇宙条約の批准まで時間がかかった理由は国会答弁から見えてくるかもしれませんし、国内法整備をしてから批准しようとしたのかもしれません。国によって、もしくは条約によって、批准が遅れる理由がありますので・・もし調べてみて何か分かりましたらぜひ授業中にご共有ください!

C. 第1回目の講義ありがとうございました。航空法、宇宙法に関しての基本的な概念が理解できました。特に国際公域について、公海については海洋法で存在を意識していましたが、空域は全く意識してこなかったので、スライドを見て初めて「言われてみれば領空があるんだからそれ以外のスペースもあるよな」と感じました。

A. コメントありがとうございます!そうですね。地球儀とかを見ながら考えると、結構、領空よりも公海上の国際空域の法が広かったりします!

Q. スペースデブリについて授業でも触れられていましたが、これらをこれ以上増やさない国際的な枠組みは軽減ガイドラインがあるとして、既にあるデブリを回収・除去する国際的な取組みはないのでしょうか。JAXAが除去実証をしようとしているようですが、国際的に動いているという話は聞いたことがないので疑問に思っています。

A. ご質問ありがとうございます。既にあるデブリの回収・除去をする宇宙ビジネスや、地域的なプロジェクトはあります!また、宇宙デブリ回収は、専門用語でActive Debris Removal (ADR)といいます。一方、技術的に「他国の衛星に近づいて、回収する技術(破壊もできる)」は、そのまま宇宙兵器ともなりうるため、国際法上の課題も出てきます。宇宙デブリの講義も後半にありますので、その時に詳しくご説明しますね。

C. 大変興味深い講義をありがとうございました。 自分自身、今までの業務で航空法等を意識することがなく過ごしてきましたが、研究テーマや自身の興味関心(成層圏での航空運用)に関する知識を得たいと思っておりますので、講義中にもお話させていただきましたけれども、宇宙だけでなく、近宇宙(?)に関する部分についても、教えていただければ幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします。

A. コメントありがとうございます。昨年、日本、米国、英国、カナダ及び欧州連合(EU)が共同ステートメントを発表し、高高度の空域における民間航空の飛行について、国際民間航空機関(ICAO)が規則の整備をするよう提案したようです。これから注目すべき分野ですね。何か情報が見つかりましたら講義でご共有ください!

Q. 国際協調における宇宙分野の活用可否(例:気候変動のように米中が互いの利害関心に配慮する可能性の有無)について

A. ご質問ありがとうございます。宇宙技術は軍民両用の性質でして、宇宙活動は国家安全保障に直結するため、国家戦略的な国益が優先される活動となります(何を国益とするかは国によります)。このため、同盟国との宇宙協力はよくありますが、その逆のケースはほぼありません。また、宇宙先進国と発展途上国との国際協力では、技術移転(technology transfer)が起こらないよう、細心の注意が払われます。

Q. 宇宙での正当防衛・緊急避難(例:衛星軌道で接近された際の自衛。回避に伴う第3国衛星軌道への影響)、軍事目標としての人工衛星(民生共用だった場合の判断、打上軌道などチョークポイント上で小型衛星に邪魔されたら軍事活動に従事していると見做せるか等)について

A. 宇宙活動には国連憲章も適用されるため、原則上、国は自衛権を有します。しかし自衛のためとはいえ、武力行使をしますと宇宙デブリが大量に発生し、他国の宇宙活動を危険に晒すため、容易には武力行使は正当化されません(ジュネーブ軍縮会議における議論で、国連としては否定する見解も出ました)。いろいろな文献があるかと思うので、調べてみてくださいね。

Q. 衛星が攻撃され市民生活を著しく害された場合、武力攻撃に該当するかの各国の認識について

A. はい、武力攻撃に該当します。ただ、社会インフラである衛星は小型化されたものも多く、1機を破壊しても衛星ネットワークは遮断されませんし、1機を破壊するために宇宙兵器を打上げるのはコストパフォーマンスが悪いので、電波妨害としてジャミングを使ったり、受信機に内在するソフトウェアにサイバー攻撃をかける方が一般的な攻撃手段となります。

C. 学部生以来の国際法の授業であり、こんな制度あったなと色々思い出す反面、かなり知識があやふやな部分も多数ありました。 自己紹介で軽く述べた通り、民間の宇宙開発に関する規則については全く学習したことがありません。また、サイバー攻撃との関連は学部生時代のゼミ論では深く取り扱うことのできなかった部分なので今後の授業が非常に楽しみです。

A. コメントありがとうございます!宇宙安全保障とサイバー安全保障の概念がだんだんと交差している点も少しお話しましたね。ぜひ国際法を思い出しながら一緒に勉強しましょう。

第2回授業2ne

Q. 授業でシカゴ条約に加入していない国が3つあるとの言及があり、気になって調べたところ、未批准はニウエ、コソボ、バチカン、リヒテンシュタインの4か国でした(ただしリヒテンシュタインに関しては、スイス代表が『(スイスの)条約の規則がリヒテンシュタインにも適用される』との声明を出しています)。 バチカンはそもそも空港もないため未批准なのも理解できますが、ニウエ、コソボには国際空港が一応存在しています。批准していない理由はそれぞれ違うのだろうと思いますが、実務上ではこの2か国もシカゴ条約の規定に則って業務を行っているのだろうかと疑問に思いました。ほかにもドミニカも2019年批准と遅いですが、批准以前もシカゴ条約の規定に従っていたのでしょうか。 またシカゴ条約は非常に広範な国の参加がありますが、慣習法化しているのでしょうか。

A. いろいろと調べてくださりありがとうございます!面白いですね。リヒテンシュタインに関しては、確かにスイスが利益代表として経済関連の二国間協定を締結しているようですね。それぞれの国の事情があるかと思いますが、航空活動がなく、中継地としての空港である場合など、条約の批准なしで運営してきたのかもしれません。事情までは調査しないと分かりませんが、私もライデン大学の同窓生にちょっと聞いてみますね(笑)。 また、シカゴ条約のすべての条項が慣習法化しているということはありません。シカゴ条約に批准していなければ、領空侵犯となる飛行も出てきますので・・なかなか慣習法化が難しい分野かと思います。お互いに調べてみましょう!講義でご共有ください。

C. 第一回の授業での質問のご回答と本日の授業ありがとうございました。領空侵犯とその対応について面白かったです。これについて自分で調べたいと思いす。

A. コメントをいただきありがとうございます!航空法も国内では新しい判例ができたり、ICAOでは新たな付属書が検討されたりしますので、いつも新しい動きがあるかと思います。何か発見がありましたら講義でお教えください。

C. 今回は情報が多く、参考になりました。米空軍定義の宇宙の高度80kmについて調べてみると、ベンチャー企業の宇宙旅行関連記事などでも紹介され、楕円軌道に関するJonathan C. McDowell博士の主張(高度80kmまでは周回継続可能なものもある)なども知れました。今後もこの講義を契機にしていきたいと思います。

A. コメントありがとうございます!米国は国としては境界線は不必要といいつつ、空軍では高度80kmと主張するなんて、少し不思議に思うところです。日本やオーストラリアも、COPUOSでは不必要としつつも、国内法の一部に高度100-110kmとする旨、記載しています。実務者の話を聞いてみたいですね。

C. 本日も、限られた時間の中で、興味深い講義をありがとうございました。 自分が修論で扱おうと思っている時代は、まさに空が誰にも開かれた時代の航空機(特にドイツの飛行船)ですので、WW1中に航空機が中立国に侵入する事案については、おそらく無数にあったであろう西部戦線での事例に加えて、気象の関係で、イングランドを爆撃した帰りに、オランダ上空を通らざるを得ず、高射砲で射撃されたという搭乗員の証言があったことを思い出しました。 ワルソー条約については知らなかったので、戦後、民間航空が芽生えてくるうえで果たした役割について、学びたいと思います。 おしえていただいた、ICAOでの成層圏における民間航空利用に関する規則整備等の動きについて、噂レベル、且つ軍事ではありますが、ウクライナが成層圏に打ち上げた気球で信号情報を集めているという話もありまして、利用に関しては何らかの取り決めが今後必要になるだろう、というのは非常に得心がいきます。 https://x.com/GrandpaRoy2/status/1780790108196888935

A. コメントありがとうございます。WW1のパイロットの話はとても切ないですね。また、最新の気球の情報もありがとうございます!X投稿の写真にある気球は、高度30-35kmとありましたね。航空機よりも上に浮かぶとなれば、なかなか目視も難しいですし、撃ち落とすにはコストもかかりますし・・。ぜひご研究で発見されたことも講義でご共有ください。楽しみにしております!

Q. 航空機の定義についての質問です。1回目の授業でも先生が触れられていた時に感じましたが、昨日の授業でも話が出てきたので、気になっています。 「大気中における支持力を、地表面に対する空気の反作用以外の空気の反作用から得る」ということは、空気の反作用(=揚力のことだと認識しています)以外の手段で大気中で飛行・滞空できる物体※については1944年シカゴ条約上では航空機とはみなされず、航空法の適用対象にはならないということなのでしょうか。 ※ 気球であったり、SFに出てくるような反重力エンジンやら波動エンジンやらで物理法則を無視して空に浮かびそうな技術で出来た物体を想定しています。

A. ご質問ありがとうございます!はい、基本的に「航空機」で「航空活動(業務)の用に供するか否か」が重要ですので、翼がなければ、航空機とは見做されず・・。ただ、国内法で航空機の定義を広げれば、何かしら新しい飛行物体にもシカゴ条約の適用対象とすることが可能かもしれません。他の国の定義を見れば、何か分かるかもしれませんね。

C. 航空機の定義は、私がまだパイロット訓練生だったころに日本の航空法の文言を一生懸命覚えていましたが、国際航空法における航空機の定義とは違うということを初めて知りました。日本の航空法はシカゴ条約に準拠して作られているという認識ですが、より敷衍する文言になっていることが確認できて新鮮でした。 防空識別圏に対する意識については、民間航空機のパイロットはそこまで意識されていないとは思いますが、ミリタリーのパイロットは任務と直結する部分でもあるので日々意識しながら活動しています。周辺国の活動についても日本のADIZや領空を明確に意識した行動が確認できます。(参考:防衛省統合幕僚監部 報道発表資料 https://www.mod.go.jp/js/press/index.html 「○○軍機の動向について」)

A. コメントをいただきありがとうございます。講義が少しでも何か新しい発見に繋がりましたら、とても嬉しいです。貴重なURLもお教え頂きありがとうございます!さっそく拝見致しました。「月間緊急発進状況について」のタイトルを見た時、つい「月と地球の間」と想像してしまいました(笑)。これからもいろいろご教示ください。

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